老後生活をアパートの家賃収入で補おうと、西原町の女性(63)は14年前、数千万円を借金してアパートを建てた。しかし耐震性の欠如など欠陥が次々発覚。業者や建築検査機関を提訴したが訴えは認められず、14年たつ今も裁判費用やローンで約6千万円を抱える。県住宅供給公社によると、過去10年間(2009~18年度)で住宅建設や増改築などに関する相談は年間約100~160件。女性は「他にも泣き寝入りを強いられている被害者がいるのではないか」と訴えている。(社会部・城間陽介)

「このままでは違法建築が見逃され、救済されない被害者は他に出てしまう」と訴えるアパートの家主の女性=西原町

住宅建設・増改築に関する相談件数

「このままでは違法建築が見逃され、救済されない被害者は他に出てしまう」と訴えるアパートの家主の女性=西原町 住宅建設・増改築に関する相談件数

 公社への相談の内容は「施工不良や瑕疵(かし)が見つかった」「建築図面通りに建築されない」「施工不良の修繕をしてくれない」など。建築を巡るトラブルが少なくないことをうかがわせる。

 西原町の女性が県内大手建築会社にアパートの設計・建築を依頼したのは2004年。翌05年に完成した。しかし出来上がった建物には設計図書にある耐震性を高めるスリット(緩衝材)が施されず、一部鉄筋が露出。また地上1階を地下1階として誤って建てられるなど、22件の欠陥が調査で明らかになった。

 建築物は建築基準法に基づき、行政や民間の指定機関による審査・検査を受けなければならない。だが、問題のアパートは建築段階ごとに3度の検査を受け、担当した検査員が「問題なし」としていた。

 女性と夫はアパートの建て替え費用など1億円余りの賠償を求め、2010年に業者と建築確認検査機関をそれぞれ提訴。13年5月、一審で示された業者側が補修費用約900万円を支払う和解案を拒否し、検査機関のチェックの怠慢を訴えて最高裁まで争ったが認められなかった。

 裁判の末、夫は心労で倒れ5年前に他界。アパートの部屋の一つは今も換気設備が整わず、人に貸せないままとなっている。

 建築調査で不備を指摘した建築設計事務所エイネスト(長崎県佐世保市)の平石純・1級建築士は「工事の起点となるGL(地盤面)の確認は基本中の基本。それを誤り、検査機関が指摘しないのは建築技術的にみてあり得ない。建て替え以外に安全性の回復は見込めない」と指摘。

 家主の女性は「一目で分かる建築欠陥も見過ごすようなずさんな検査であれば、被害はどこでも起きる可能性がある」と制度の不備を訴えている。