あやしても、お菓子でなだめても、何をやっても駄目。外出先で子どもがぐずり途方に暮れた経験は子育てをした多くの人にあるはずだ

▼「新幹線で泣きやまない長女をあやしていたら誘拐と疑われて通報された」。ミュージシャンで漫画家の劔(つるぎ)樹人(みきと)さん(40)が体験をツイッターでつづり、大きな反響を呼んだ。妻でエッセイストの犬山紙子さん(37)と朝日新聞の取材に答えている(19日付)

▼お盆終わりの混雑した車内。2歳の長女が泣き出し、デッキであやしていたら停車した駅で乗ってきた警察官に「誘拐の可能性と通報があった」と告げられた。疑いが晴れたのは保険証を提示し、妻に電話をかけた後

▼夫妻は子を守るために怪しいと感じれば通報は必要、という。ただ背景には、父親が1人で幼児を連れて移動することに社会の目が慣れていない側面がうかがえる。そもそも公共交通機関での子連れ移動や泣き声に不寛容な空気もある

▼沖縄都市モノレールでも、大きな荷物を持ちベビーカーを押す観光客をよく見掛ける。渋滞緩和で予定される3両編成車両の導入といったハード面の整備だけでなく、周囲も気配りを心掛けたい

▼以前、那覇行きの飛行機内で子どもが泣きやまず、いたたまれなくなった時、乗客の女性があめをくれた。さりげない厚意が子育ての背中を押す。(大門雅子)