選挙区の有権者に秘書が香典を渡したなどとして公職選挙法違反の疑いが新たに浮上した菅原一秀経済産業相(衆院東京9区)が25日、安倍晋三首相に辞表を提出した。事実上の更迭である。

 菅原氏は辞任後の記者会見で「秘書が香典を出した」と週刊文春の報道内容を認めた。同誌によると菅原氏の公設秘書が今月17日、地元の東京都練馬区内の葬祭場の通夜に香典(2万円)を持参した。

 同誌は2006年から07年にかけて有権者にメロンやカニなどの贈答品を贈っていたとも報じている。

 国会では野党が贈答品リストを作成した元秘書の音声証言を基に追及していた。

 そんなさなかに地元有権者に香典を渡すとはとても信じられない。

 野党の追及を深刻に受け止めず、有権者へ香典を渡す寄付行為が、常態化していたのではないかと疑われても仕方がない。

 菅原氏は「私の問題で国会審議が停滞するのは本意ではない」と辞任の理由を述べた。国会審議の停滞を挙げ、公選法違反の疑いを重大に受け止めているようにはみえない。不誠実である。

 菅原氏は25日の衆院経産委員会で経緯を明らかにすると言っていたが、その直前の辞任である。これで幕引きを図ろうと考えているのなら説明責任の放棄であり、とても納得できない。

 菅原氏は何人に香典を渡し、贈答品を贈ったのか、明らかにする責務がある。

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 公選法は選挙区の住民に金銭や物品などを提供することを禁じている。本人が出席する葬式の香典などは認められているが、秘書らが代理として渡すことはできない。

 寄付行為が禁じられているのは買収行為とみなされ、有権者の自由な判断に基づいて投票されるべき選挙をゆがめかねないからである。

 自民党の小野寺五典衆院議員(宮城6区)が1999年、地元で氏名入りの線香セットを配って公選法違反容疑で書類送検され、議員辞職したことが思い出される。

 電力会社を所管していた菅原氏は関電役員の金品受領問題で「事実関係を徹底解明し、厳正に処する」と厳しい姿勢をみせていた。自身にも当てはめるべきである。

 香典は公選法に触れる可能性が高く、民主政治にもとるものだ。贈答品問題は時効が成立しているが、道義的責任は逃れられない。衆院議員を辞すべきである。

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 第2次安倍内閣以降、閣僚辞任は9人目である。

 安倍首相は閣僚が辞任するたびに任命責任に言及するが、これ以上のことはしない。今回も任命責任を認め「国民の皆さまに深くおわびする」と陳謝した。「これで終わり」という姿勢が9人にも及ぶ閣僚の辞任につながっているのではないか。

 安倍首相は菅原氏に国会で説明するよう指示すべきである。辞任で真相をうやむやにしようと考えているなら長期政権のおごりと緩みというほかない。政権と「政治とカネ」に対する不信は増幅するばかりであろう。