社説

社説[核廃絶決議案]被爆国の理念、骨抜きに

2019年10月27日 08:41

 核大国の軍拡と核の拡散・不安定化が同時に進行する厳しい国際環境の中で、日本の非核政策が、ずるずる「後ずさり」し始めている。

 日本政府が今月、国連総会第1委員会(軍縮)に提出した核廃絶決議案の内容が明らかになった。

 核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任する日本政府は1994年以来、毎年、その時々の核軍縮に関する課題を織り込んだ決議案を国連総会に提出してきた。

 決議案が幅広い支持を得て採択されてきたのは確かだ。問題はその中身である。

 昨年までは「核使用による壊滅的な人道上の結末への深い懸念」との表現があったが、今年は決議案から「深い懸念」という文言が削られた。

 「深い懸念」は被爆体験に根差した核心的な表現である。そのような被爆者の思いが世界の人々に共有され、核兵器禁止条約の採択につながった。

 ところが、今年は核兵器禁止条約に反対する核保有国を意識して「深い懸念」との表現を削ったのだという。

 核保有国が非保有国に核攻撃しないことを約束する「消極的安全保障」に関する表現も削除された。

 決議案の「どこにも核削減の言葉は見当たらない」(阿部信泰元国連事務次長)。これでは被爆国としての非核理念が骨抜きにされかねない。

 核を巡る米ロ中の利害の対立が表面化し、それぞれの国が軍拡の動きを加速させている。核のリスクが高まりつつある危険な状況だからこそ、日本は核軍縮に向け、もっと存在感を示すべきだ。

■    ■

 米国と旧ソ連の間で結ばれた中距離核戦力(INF)廃棄条約が8月に失効した。核軍拡の歯止めを一つ失ったのである。

 米ロの新戦略兵器削減条約(新START)は2021年2月、期限切れを迎える。米国はロシアとの条約延長に消極的で、トランプ政権は条約を延長するか否か、まだ態度を決めていない。

 その背景にあるのは中国の核軍拡である。だが、中国は米ロに比べ核弾頭数が圧倒的に少ないことを理由に、核軍縮には消極的だ。

 米ロ中がせめぎ合い、北朝鮮が核開発を継続する中で、米国は「使いやすい核兵器」の開発に乗り出した。

 核以外の攻撃に対しても核による報復を排除しない政策を取り始めたともいわれる。

 「核のない世界」をめざしたオバマ前政権とは真逆の、核使用のハードルを低くするような政策に転換したのである。

■    ■

 中国の中距離ミサイルの開発によって在日米軍が攻撃の対象となり、抑止力が弱体化するのを恐れる米軍は、日本への新型ミサイルの配備を検討し始めた。

 地上発射型中距離ミサイルの配備先候補に伊江島補助飛行場も含まれているというから驚きだ。

 ただでさえ基地の過重負担に苦しむ沖縄を復帰前のような状態に逆戻りさせてはならない。

 軍拡にストップをかける新たな取り組みが必要だ。

前の記事へ 次の記事へ
沖縄関連、今話題です(外部サイト)
JavaScriptをOnにしてください
きょうのお天気