社長の言葉を鮮明に覚えている。「母親以外は何でも売る」。県内大手企業が経営難に陥っていたころ。売れる事業や資産を探しては、どんどんさばいていった

▼今は公共施設に名前を付ける権利、ネーミングライツというものが売れる。米国流のビジネスは沖縄でも広がり、見渡せば企業名を冠した施設が増えた

▼財政が悪化する国立大にも波及している。琉球大には「全保連ステーション」が誕生した。何やら家賃保証の契約窓口のようだが、実は大学会館。これが第1弾で、今後キャンパス内の農場やループ道路、池にも名付け親を募集する

▼性質上、金の切れ目で名前が変わるのは避けられない。プロ野球楽天の本拠地、宮城球場の命名権者はフルキャスト、日本製紙と変遷してきた。不祥事のため途中で企業名を外す混乱もあった

▼現在は楽天が命名権者に定着したものの、その時PRしたいサービスによって名前を変えている。ファンが「会社の都合でころころ変わって」と嘆くのを聞いた

▼名前というものは共有される前提で成立している。名付けるだけでなく、呼ぶ行為もセットだ。だから命名権を売る人は、その名を呼ぶことになる私たちの意識も差し出し、お金に換えている。資金獲得のメリットは理解できるのだが、いまひとつすっきりしないのはきっとそのせいだ。(阿部岳