久米島出身で那覇に住む上江洲智一郎さん(70)は、2年連続の大会参加で完走を果たした。初出場の昨年は64年ぶりに故郷を訪れ、島に住む唯一の親戚である叔母の仲地ヨシ子さん(84)と対面。今年は智一郎さんの娘夫婦や孫も久米島を訪れ、ヨシ子さんと共に智一郎さんの力走を支えた。完走後は喜びを分かち合い、ルーツである久米島で親族の絆を再確認した。

完走後、叔母の仲地ヨシ子さん(前列左)と子や孫らに祝福される上江洲智一郎さん(同中央)=27日、久米島町営仲里野球場

 智一郎さんは6歳の頃、久米島で米軍の軍作業に従事していた父・智善さんの転勤を機に一家で那覇へ移住。以来、一度も島を訪れることはなかった。

 次々にきょうだいが沖縄本島へ移り住む中、智善さんの妹ヨシ子さんは久米島の男性と結婚し、島に残った。「本音はきょうだいと一緒にいたかった」と振り返りながら「昨年、智一郎が初めて私を訪ねて来たので驚いた。同時に『フルマラソンを走るので応援してほしい』と言われて必死に応援した」と笑顔で語る。

 今年70歳の節目を迎えた智一郎さんは「自分が走る姿と故郷を目に焼き付けてほしい」と妻や娘を誘い、2年連続の参加を決意。大会前には島内を散策し、上江洲家の起源や昔の生活の様子などを伝えた。

 大会では叔母や家族から沿道の声援を受けコースを力走した。父の背中を見つめていた長女の美保さん(36)は「久米島で父や祖父の背景を知り、家族の絆がさらに強まった」と実感。智一郎さんの姿を兄の智善さんと重ねたヨシ子さんは「本当に格好よく、うれしかった」と声を弾ませた。

 レース中、沿道の人々に「久米島出身です」と叫んで自己紹介を繰り返した智一郎さん。「この島とマラソンが叔母や家族をつないでくれた。また家族とこの場所に戻ってきたい」と完走メダルを握りしめた。