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消火阻んだ猛烈な首里城の炎 危険な状況下で懸命の放水 崩れ落ちる正殿に悲鳴

2019年11月1日 06:10

 琉球の歴史を象徴する首里城が31日、音を立てて崩れ落ちた。未明から燃えさかった炎の勢いは衰えず11時間燃え続けた。鮮やかな朱色の正殿や北殿、南殿などが灰と化した。沖縄戦で焼失し、復元された首里城が目の前で崩壊する瞬間、住民は涙をぬぐい、立ち尽くした。

火災で赤く染まる空を見上げる地域住民ら=31日午前6時13分、那覇市首里真和志町(田嶋正雄撮影)

 那覇市消防局は他の自治体にも応援を要請して車両53台、消防団を含め171人で対応した。木造の正殿が激しく燃えたため、正殿前の御庭は遠赤外線の熱線によって直接伝わる「輻射熱(ふくしゃねつ)」が充満し、放水していた消防隊員らは一時退避。現場に近づくことすら困難だった。

 猛烈な勢いで噴き出す炎に、駆け付けた消防士はなすすべなく、正殿内部での放水を断念。正殿内の消火設備や屋外の放水銃には熱で近づけない。高低差のある城の構造も消火を阻んだ。消火水槽から消火用ホースを引っ張る際も城壁が文字通り「壁」となり、迂回(うかい)せざるを得なかった。

 現場で指揮を執った那覇中央消防署の照屋雅浩署長は鎮火前、記者団に「輻射熱がひどく、現場に近づくのは容易ではない」と憔悴(しょうすい)した表情で語った。応援の署員1人が脱水症状を起こした。

 午前3時10分ごろに火災現場に到着した那覇市消防局の島袋弘樹局長は午後の会見で、混乱した現場を思い起こすように何度も視線を上に向け、言葉を選んだ。「到着した時、熱を避けようと隊員が低い姿勢で正殿に放水していた。危険な状況だった」。二次被害を防ぐために御庭から隊員を退避させて消火活動をしたと説明し「もっと近づいて消火活動ができていれば、これほどの勢いで燃えなかったかもしれない」と声を落とした

 「バチバチバチ」。午前4時33分、炎に包まれ、骨組みだけになった正殿の屋根が大きな音を立てて焼け落ちた。当蔵交差点付近で心配そうに見ていた多くの住民から悲鳴が上がった。

 火の粉は周辺の住宅街に降りかかった。

 「家全体に水をかけてください」。首里城の南方、煙が充満した首里金城町に住む岸本幸一さん(60)は駆け付けた消防署員に懇願した。屋上はウッドデッキで飛び火によって延焼する可能性があった。同町一帯は燃えた木片や灰が散らばり、住宅の屋根や車のボンネットには10センチ前後の木片も残っていた。かろうじて延焼を免れた岸本さんは「昨晩は雨が降ったから延焼を防げたのかもしれない」と胸をなで下ろした。

 同町の石川えりなさん(45)は火の粉が自宅にも降り、慌てて家族で車に乗り込み避難した。子どもが火の手を見て「戦争みたい」とつぶやいた。

 首里城付近に住む、首里まちづくり研究会事務局次長の新垣伝さん(35)の自宅にも火の粉が舞い、バチバチと燃える音が間近に聞こえた。「どうしようもないというのが先で、見届けるのも僕らの仕事なのかもしれない」。崩落をじっと見つめた。

 徒歩約15分の場所に住む町田洋美さん(49)は城南小学校のPTA会長。午前5時半ごろ、警察の呼び掛けで避難所となった同校体育館の鍵を開けた。「地域住民らが集まり、泣いている人がたくさんいた」と肩を落とした。

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