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県庁・市役所前でヘイトスピーチ 行政の無策と放置続く 弁護士「人権守る盾になる勇気を」

2019年11月3日 14:30

[反ヘイト 川崎ー沖縄](5)

 沖縄をよく訪れる「全日本おばちゃん党」代表代行の谷口真由美さんが、常々疑問に思っていることがある。「沖縄の役所には、なんで『人権』と名前がつく課がないの?」

講演でヘイトスピーチの害を語る師岡康子弁護士=9月、川崎市

 県都那覇市で人権問題を扱うのは「市民生活安全課」。担当者に聞くと、「本土のように被差別部落がなく、対策もなかったからではないか」という。

 ただ、名前が見えないだけでなく、課としての人権問題の取り組み自体が少ない。消費生活、多重債務など8分野の相談業務の一つとして、人権擁護委員に相談を取り次ぐ程度だ。

◇   ◇

 市役所前では毎週水曜日、「シーサー平和運動センター」を名乗る団体が人権侵害のヘイトスピーチを繰り返している。1階にある市民生活安全課は現場から約30メートル。担当者は「気にはなっている。今後、できることを検討していく」と話すにとどまる。

 ヘイトスピーチ対策法は、国だけでなく自治体にもヘイト解消の努力義務を課している。2016年6月の施行からもう3年余り。「対策が遅いと言えば遅いかもしれない」と担当者は認める。

 市役所の隣にある県庁も大差はない。女性力・平和推進課の担当者は対策法を所管していることを当初明確に把握していなかった。

◇   ◇

 続く無策。担当者は理由の一つに憲法が保障する「表現の自由」を挙げる。しかし、ヘイトスピーチは立場の強い者が弱い者の属性を攻撃し、差別を扇動する暴力であり、表現の自由の枠外にある。

 問題の第一人者、師岡康子弁護士は「表現の自由の乱用は許されない。ヘイトスピーチは対象とされた人々の心を突き刺し、属性を隠さざるを得なくするなど、マイノリティーの表現の自由を侵害する」と指摘する。

 中国を標的にする市役所前街宣で言えば、中国の政治体制を批判することは自由でも、中国人であることを理由に尊厳を傷つけることは許されない。「差別を助長する目的で公然と、著しく侮辱し、社会からの排除を扇動している。ヘイトスピーチ対策法の定義に当てはまる明確なヘイトスピーチだ」と言い切る。

 「市役所の目の前で毎週行われているのに行政が放置しているのは驚きだ」。あらゆる差別を禁じ、ヘイトスピーチの恐れがある場合の公共施設の利用制限などを盛り込んだ条例の制定を提案する。

 川崎市は差別根絶条例を年内に制定し、全国で初めて刑事罰付きでヘイトスピーチを禁止する見通し。師岡弁護士は「自らが盾になって市民の人権を守る勇気ある姿勢を、全国の自治体が見習ってほしい」と語った。(編集委員・阿部岳)=おわり

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