住民票やマイナンバーカードに旧姓を併記できる制度がきょうからスタートする。結婚後もこれまでの名字で仕事を続ける女性が増える中、旧姓使用の拡大を図る政府の女性活躍推進策の一つだ。

 併記を希望する人は、旧姓が確認できる戸籍謄本などを持ち、居住市町村に届け出る必要がある。手続きが終了すれば、氏名とは別の欄に旧姓が表示された住民票の交付が受けられる。マイナンバーカードには、姓と名の間にかっこ書きで旧姓が記載される。

 これら公的な証明書への旧姓併記は、銀行口座の名義に旧姓を使う場合、旧姓のまま就職や転職する場合などの本人確認に役立つという。

 政府は2016年に決定した「女性活躍加速のための重点方針」で、働く女性が不便を感じないよう、旧姓の通称としての使用拡大を明記した。

 「身分証」として利用されることの多い運転免許証も旧姓記載に向けた準備が進み、パスポートへの拡大の動きもある。 

 結婚までに築いたキャリアが分断されるなどの不利益から旧姓使用を望む女性は多い。慣れ親しんだ名前を変えなければならないことに痛みを感じる人も少なくない。

 旧姓が使える場が増えることは歓迎する。だが政府が旗を振る旧姓使用拡大が映し出すのは、夫婦に同姓を強いる現行法の限界でもある。くわえて実際に使えるかどうかは、それぞれの職場やケースで変わってくる。

 間に合わせの対策ではない、根本的解決が求められる。

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 夫婦別姓を認めない民法規定を「合憲」とした最高裁判決から4年近くがたつ。

 日本人同士の結婚で別姓を選べないのは戸籍法の欠陥で憲法違反だとした訴訟で、東京地裁は今年3月「合憲」の判断を下した。

 裁判所は、選択的夫婦別姓の導入や別姓が認められないことによる不利益について「国会で論ぜられるべき」と突き放すが、国会での議論は一向に進まない。

 先月、うるま市議会が「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書」を可決したのは、この問題に消極的な国の姿勢を問うものでもある。

 きっかけとなったのは1人の女性が始めた請願活動で、同様の意見書は全国各地の議会で可決されている。

 今の時代にふさわしい、法的選択肢を用意することは、政府や国会の責務である。住民により近い地方議会の声に耳を傾けるべきだ。

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 国立社会保障・人口問題研究所が全国の既婚女性を対象に昨年7月に実施した調査で、「夫婦が別姓であってもよい」と考える人が50・5%となり、初めて半数を超えた。

 女性の社会進出とも関係しているのだろう。容認は現役世代で目立った。家族のかたちに関する意識は確実に変わってきている。

 法律で同姓を規定する国は日本以外に把握されていない。

 個人の選択や価値観を大切にする見直しは時代の求めである。