大弦小弦

[大弦小弦]魂の入った首里城の瓦

2019年11月7日 12:33

 青い空に映える首里城の赤瓦は、名護市の「古我知粘土」で作られたものだった。1990年1月13日の本紙朝刊に、採取先の県農業試験場名護支場で行われた鍬(くわ)入れ式を伝える記事が掲載されている

▼「古我知粘土が最も赤い色を出す。吸水率の低さ、耐強度も申し分ない」。赤瓦を復元した故奥原崇典さんは、こう話していた

▼奥原さんは曽祖父から4代続く瓦職人で、首里城のために5年の研究を重ねた。私財をなげうって新たな設備も導入。正殿に葺(ふ)いた約5万5千枚の赤瓦は、同じ数ほど失敗を繰り返して、試行錯誤の末に完成した「魂の瓦」だった

▼首里城の火災を受け、県琉球赤瓦漆喰(しっくい)施工協同組合は、焼け残った瓦を再利用するよう県に求めている。古我知粘土の採取が困難で、土の配合や焼く温度を知る職人がいない理由もあるが、「再利用が復興のシンボルになり、未来への教訓にもなる」との思いが強い

▼火災からきょうで1週間、再建を願う声や支援が広がっている。同組合の田端忠代表理事(56)は「若い人材を育て、先輩が残したノウハウを生かす。県民の歴史の一ページを創造しなければ」と前を向く

▼奥原さんの瓦の再現は不可能という。でも、残った瓦に新しい魂を吹き込むことはできる。単なる再建ではない「創造的再建」が、次代の匠を育てるはずだ。(吉川毅)

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