動物園のずさんな管理は指摘しておかなければならないが、同時に県民の宝である生き物が違法に取引されている事態の深刻さも共有する必要がある。

 「沖縄こどもの国」で希少なカメが大量に盗難に遭っていたことが分かった。

 盗まれたのは屋外飼育場で飼われていた、沖縄だけに生息する国指定天然記念物のリュウキュウヤマガメ15匹と石垣島などに生息するセマルハコガメ49匹の計64匹。いずれも絶滅が危惧されている。

 園の説明によると、飼育員がカメがいないことに気付いたのは10月28日。だが環境省や県などへの連絡は3日後の31日と遅れ、警察への被害届は11月6日とずれ込んだ。

 かねてより違法取引が問題となっている希少生物だけに、販売目的での盗難であれば通報の遅れが空港などでの「水際対策」に影響した可能性も否定できない。

 園では昨年9月にもリュウキュウヤマガメ8匹とセマルハコガメ5匹が行方不明になっている。その後、飼育場をネットで覆う展示方法に変更したというが、今回はそのネットをつなぐ結束バンドが切断され盗難に遭った。防犯カメラも近くには設置されていなかった。

 こどもの国で動物の管理体制が問われるのはこれが初めてではない。今年6月、飼育舎の鍵の掛け忘れからサル14匹が逃げ出し大騒動となったのは記憶に新しい。

 ずさんのそしりを免れず、猛省を促したい。経緯を検証した上で再発防止策を示すべきだ。

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 大量盗難の背景に何があるのか。

 昨秋、ワシントン条約で取引が規制されているリュウキュウヤマガメ60匹が香港国際空港で見つかり、密輸しようとした日本人が摘発された。

 中国や香港などでは希少種が高値で取引されているといい、1匹50万円以上で販売されていたケースもあった。

 野生生物の取引を監視する国際NGO「トラフィック」の2017年度の調査で、南西諸島固有の両生類と爬虫(はちゅう)類の67種・亜種のうち37種が国内外でペットとして取引されていた。その中にはリュウキュウヤマガメ、ヤエヤマセマルハコガメも含まれている。

 県の「レッドデータおきなわ」は、ヤエヤマセマルハコガメについて、ペットとしての違法採集も個体群維持に悪影響を与えている可能性があると指摘する。

 今のまま密猟や違法取引が続けば、沖縄の宝が消えることにもなりかねない。

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 やんばる地域などの世界自然遺産登録が延期された理由の一つに、希少種密猟など保全政策への懸念があった。

 9月議会で可決された「県希少野生動植物保護条例」は、これら動植物の保護を進めるための仕組みでもある。

 捕獲や採取に対し罰則を設けるなどの踏み込んだ対応は評価できる。ただ持ち出しを確実に防ぐには、水際対策を含め総合的な取り組みが必要となる。

 国レベルでの対策強化も求めたい。