考えてみたら、映画「男はつらいよ」の新作を大きな銀幕で見るのは初めて。東京・築地の松竹本社の試写室。再び寅さんに会える喜びと、演じる渥美清さん亡き今、どんな作品に仕上がっているかという期待感が入り交じる

▼1969年の第1作公開からちょうど半世紀。下町の団子屋はカフェに変わり、年を重ねた登場人物たちは、生きづらい世の中で悩みを抱える。4Kデジタル技術でよみがえった寅さんがそっと心を癒やす

▼50本目となる新作は、日本中で愛された歴代作品の魅力を凝縮した趣が心地いい。ちゃぶ台を囲み、騒々しくも安らぐ一家だんらんのひととき。懐かしき昭和の風景をいつまでもなくしたくない

▼渥美さんは生前、こんな言葉を残している。「人生さまざまなことがあるが、時にはじっと一人で耐え、時には家族とともに泣き、喜ぶ。その一つ一つこそ、人生をより深く、より高く、味わいのあるものにしていく」。全国を旅して、喜怒哀楽を名もなき人々と分かち合う寅さんの姿と重なる

▼試写室を出た帰り道。しばし空想にふける。全作で寅さんとマドンナが最も結婚に近づいたのは沖縄が舞台の「寅次郎ハイビスカスの花」

▼もしも結婚して沖縄で暮らしたらどうだったか。ウチナーンチュと笑い合う様子が目に浮かぶ。新作公開は12月27日から。(西江昭吾)