大弦小弦

[大弦小弦]「犠牲は必要」論の卑劣

2019年11月18日 07:30

 いつも沖縄の海をバックに動画を撮る「せやろがいおじさん」こと榎森耕助さんがこの夏、長崎ロケに出た。長崎県と佐世保市が石木ダムを計画する清流に飛び込み、「必要なのは強引に押し切る力じゃなくて、引き返す勇気とちゃうか~」と叫んだ

▼事業開始は44年前。市の水需要予測は過大だと指摘されている。「佐世保市限定で人口が激増しそうなムードとか漂ってたん?」

▼状況は切迫している。予定地に暮らし続ける13世帯の家や土地は、県と市が収用手続きを終えた。きょう18日までの明け渡しを求め、今後全国で初めてダム事業で住民を家から立ち退かせる行政代執行の恐れがある

▼長崎新聞は、関連工事への抗議の座り込みを伝える。過去の強制測量には機動隊が導入された。補償と移転を巡る切り崩しで、住民の間に分断が持ち込まれた。長崎、辺野古。構図がとても似ている

▼北村誠吾地方創生担当相は9月、佐世保市でこう発言した。「誰かが犠牲になり、協力をして、世の中は積極的なボランティア精神で成り立っている」

▼本音だろう。少数の犠牲はやむを得ない。強制するのは心が痛むから進んで協力してほしい-。どこまでもひきょうな多数派の論理。例え少数であっても、生まれ持った人権は奪えない。暮らしを奪わせない。沖縄からも、声を大にしたい。(阿部岳

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