2015年に日本写真協会新人賞と木村伊兵衛賞を受賞した沖縄県出身の写真家、石川竜一さんの写真集『adrenamix』発売を記念したトークイベントが2015年11月28日、那覇市のジュンク堂書店那覇店で開かれた。石川さんをテーマに番組を制作した琉球放送の與那嶺啓アナウンサーが聞き手を務め、石川さんの多彩なエピソードを引き出した。トークのほぼ全文を書き起こし、再現する。

【與那嶺】その当時のカメラってまだ使ってるんですか?

【石川】いや、それはぶっ壊れていて子供のオモチャになってて。

【與那嶺】そうですね、当時一番最初にあそこで「買わないか?」って声かけられて買ったカメラが壊れてたんですよね。

【石川】壊れてましたね。でもそのリサイクルショップにインタビューしに行ったじゃないですか、その時にまた同じカメラをおじさんが置いてたんですよ。さっき映像で触ってたのが同じカメラで。それを見つけて「おじさんまた壊れたの売ってるの〜?ダメじゃない?」って話して。でも「これは動くよ〜」とか言ってて、怪しい、と思いながら(笑)。でもまた1000円で売ってもらって、今そのカメラ一応持っているんですけど。

【與那嶺】当時のエピソードをお話しいただけますでしょうか。

【石川】そういう、ちょっと何かしようっていう時期に、でも手に何かを持ってるのが嫌だっていう気持ちがあって、なんでもすぐに使いたい病みたいになってたんですね。働いてなかったけど、彼女とか親からお金を借りたりして。その時ポケットに2000円持っていて、あのおっちゃんに「これ2000円だけど1000円でいいから」って。使いたい病だから、そうやって言われたらしょうがないかな、みたいな。で、カメラを買って、フィルムも残りのお金で買って。で、撮ったら壊れてて。僕はマニュアルカメラだと思ってたから、色々自分なりに、何もわからないけどここのボタンを目盛りをずらして押して、ここの目盛りをずらして押してってやってたんですよ。ジュースの空き缶飲んだのを、これ回していったらどういう写りになるのか?ということを一番はじめにやったんですよね。で、それを現像に出して。今考えたら、そうしたら絶対に何か写ってるはずなんですよね。でも何も写ってなくて。

 現像に出したカメラ屋のおじさんに「カメラの使い方教えてー、何も写ってない」って言って。で、今はもうないんですけど、大山(宜野湾市)に島カメラってところがあって。そこのおじさんの所に通って、「あのー、カメラが壊れてるんじゃない?」って言われて。でも、「いやいや、壊れてないって言ってたから」って。そのおじさんにカメラ見せるのが恥ずかしいんですよね。だから「壊れてないんだからー!」みたいな。どんなカメラを使ってるか見せるのも恥ずかしいし。その縁でなんとなく写真部に入ったりして、でもカメラは誰にも見せない。恥ずかしくて。でもどうやっても写らないし、もう金もないから、島カメラのおっちゃんに「このカメラ。レンズがガタガタして、全然ダメみたい」って。「コレ買わないとダメだよ。直したらもっとお金かかるよ」って。それで、小禄の中央カメラ屋さんを教えてもらって、カメラを見に行って。で、バイトを、そこで初めてサンエーのレジのバイトをしたんですけど。それでカメラを買って。

【與那嶺】それからどんどんカメラにのめり込んでいくんですね。今日この第3弾で発売になった「adrenamix」はその始めた当時、初期の頃の作品が?

【石川】えーっと、確かにスナップを撮り始めてからの始めではあるんですが。その前に色々やってて、コラージュとか。それから色々あって外に出るようになったんですけど、その始めの頃ですね。コラージュとかが今から4、5年くらい前だったので、だから5、6年前とかの写真ですね。2009年がメインになっていて、でもつい最近のもあることにはある。

【與那嶺】今回の新刊は、コンセプトというのはあるんですか?

【石川】コンセプトっていうか、そんなものはあまりないんですけど。一応なんていうかな。写真集を見てもらえれば分かるんですけど、ああいう状態の時期って、今の自分みたいに、写真集を出版させてもらえたり、テレビに出させてもらったり、賞をもらったりとかっていうのは、多分あの頃の俺が見たら『クソだな』って思ってたんですよね。アホらしい、みたいな。確かにそうだと思うし、でも今こういうことをやったりしていて、あの頃思っていたことも嘘じゃないというか、やっぱり今でも変わっていない気持ちはあって。世の中ってなんかどうしようもないな、楽しくないなというのがやっぱり心のどこかにはあって。でもあの時の気持ちと違うのは、そういう中でも何かを肯定していかないといけないっていう。例えば自分を信じる・・・信じるとかいう言葉は好きじゃないけど、とにかく何かやらないと、グダグダしてても何も進まないし終わりもしないし。あの時の気持ちを整理したということだと思うんですけど。という感じですね。まぁ、写真集の後ろの方にテキストも書かせてもらってて、ちょっと詩みたいなかんじで。あんなの今、真面目にあんなこと書いたら恥ずかしいでしょう?とか思うんですよ!(笑)。いまだにこの写真集の内容とかも、今見たら恥ずかしかったりする。本当にもう、バカヤローだな!みたいな。

【與那嶺】それはどういう所に感じるんですか?

【石川】えー? だってぇー。だってだってー。(笑)

【與那嶺】あははは。

【石川】なんか・・・色んな所でチンチン出したりとか、暴走族と一緒に何かやったりとか、働きもしないで毎晩毎晩友達と酒飲んでたりとか。やっぱりその時は、何かあって。テキストのところは、本当にその時の気持ちで書く、みたいなところがあったんですよ。ちょっと恥ずかしいけど。それを思ってるのは嘘じゃないって。今やってることと、別々にあるわけじゃないみたいな。一緒にいる人たちとやっぱり変わらないというか。

【與那嶺】この写真集を作るにあたって、昔の自分と向き合えたとか、その時の気持ちに戻ってテキストを作ってみたりっていうので、過去を肯定できた気持ちもありますか?

【石川】うーん・・・やっぱ恥ずかしい。

【與那嶺】アハハ。

【石川】その時も、肯定したというか、あきらめたというか。そういう気持ちがあったから、写真を続けられたし前に進めたというのもあるから。そんなに何かが大きく変わることってないじゃないですか。みんなその時々で、その時にあった気持ちで生きてる感じっていうか。今でも大して変わらないですよ。

【與那嶺】今回の新刊に掲載されている写真というのは、どうやって厳選したんですか?

【石川】その時の気持ちと言うか、テンションというか。今考えたら恥ずかしいものだけど、でもそれをそのまま形にまとめられたらな、という感じですね。

【與那嶺】そういう気持ちが反映されたような写真を選んだ、と。

【石川】そうですね。

-ここで写真集「adrenamix」を見ながらの石川さんの解説がありました。(省略)-