2015年に日本写真協会新人賞と木村伊兵衛賞を受賞した沖縄県出身の写真家、石川竜一さんの写真集『adrenamix』発売を記念したトークイベントが2015年11月28日、那覇市のジュンク堂書店那覇店で開かれた。石川さんをテーマに番組を制作した琉球放送の與那嶺啓アナウンサーが聞き手を務め、石川さんの多彩なエピソードを引き出した。トークのほぼ全文を書き起こし、再現する。

【與那嶺】僕、「ムーブ」をにつくる時に感じていたことの一つが、石川さんは多分しゃべるよりも文章書くほうがずっと得意なんじゃないかって思ってたんですね。というのも、新聞記事を見たり雑誌を見たり、写真に添えられている文章だったり、こういった巻末のテキストを見た時に、どの言葉選びも巧みというか面白いし、とても絵が浮かんでくるような表現があって素敵だなと思うんですけど。こういうのってどうやって磨かれたのかなって。

【石川】うーん。引きこもっているというか、落ち込んでいる時期に結構本読むの好きだったり、映画見るのが好きだったり、CD聞くのが好きだったり。基本インドア派なんです、気持ち的には。何も言われなければ何もしない感じの。みんなそうか? 結構こもってやるのが好きだったりして。多分そういうことがあるかなぁ。DVDとかも、落ち込んでいる時は、これインドアって言えるのかどうか分からないんですけど、ゲオとかが旧作セールとかやるんですよね。1週間だけそのセールがあって、一店舗で10本までしか借りられないんですよ。その時になったら僕、近所の3店舗くらい回って30本借りるんですよ。

【與那嶺】はー! すごい!

【石川】で、1週間でDVD30本見る。そういう感じの。落ち込んでたというか、そういう生活してたんで。1日で沖縄のブックオフ全部回って1番安い中で良いのを買うとか。

【與那嶺】達成感を味わいたいんでしょうね。

【石川】そうそう。

【與那嶺】そういう時にやっぱり言葉に触れる機会があってかな。

【石川】でも、そんなにですよ。本当に、なんか恥ずかしいですよね。自分なんか見られるって言うのは。

【與那嶺】いやいやいや。1番最初に写真に文章添えたときって、覚えてます?

【石川】それはもう、写真集の時。あと、写真に文章っていうことでいえば、展示会とかの時に少しつけたりとか。それこそ僕の恩師の勇崎哲史がやっている写真展「フラグメンツ」に参加させてもらったことがあったりとか。そこで少しテキスト書いたりとかっていう感じですね。

【與那嶺】結構こういうのってスラスラ出てきちゃうものなんですか?

【石川】いや、写真についてだからでしょうね。写真って多分、言葉ではないけど、写真を組み合わせたり見たりするときと、文章を作るのは似てるんだと思います。周りの人に、だからそういう文章とかが組み立てられるのかなぁ、って言われたことがあったりして。そうかもしれないなぁと思う。それこそ僕は学校の感想文とかも今まで1度も提出したことがないし、論文も書いたことがなかったので。そんな僕に、写真やって初めてそういう風に言われるのは結構驚きますね。

【與那嶺】ここまでちゃんと見て楽しんでほしいですよね。写真集購入された方には。ちなみに今回、1番こだわった部分って何かあったりします?

【石川】こだわりっていうのはそれぞれあってないようなもんっていうか、それぞれの写真集にあるんだろうから。うーん。1冊目、2冊目みたいなガッシリしたもんじゃない方がいいなぁと思って、こういう形にはしてます。友達とかに見てもらって言われたりするのは、「友達の家にあるアルバムみたいだ」って。周りのやつからすると結構それぐらい距離が近い出来事も、あのときの記録ぐらいのものになるので、そういうのがいいなぁと。中学生や高校生が持っているイメージのものというか。そんな感じです。

【與那嶺】このサイズ感だし、気軽に手に取って見て欲しいですよね。前作と比べると。今回は初めて県内の会社、でいご印刷に印刷をお願いしたという。

【石川】もともとこの写真集を赤々舎から出版する前に、しば正龍という舞踊家の方の写真を撮らせてもらったことがあって。その写真集を印刷してもらったのがでいご印刷だったんですよね。そういうのがあって、どういうことができるのか、というイメージというか。でいご印刷だったらこういうことができるんじゃないかとかっていう部分があって。そういうのを赤々舎の社長さんとかデザイナーさんと話してて、だったらいいんじゃないと。

【與那嶺】そのつながりで、今回の第3弾が完成したということですので、ぜひ皆さん手に取っていただきたいと思います。ここまで新刊に関するお話を聞いていきましたけれども、続いては近況と言いますか、最近の活動についてうかがいたいんですが。最近は何してらっしゃるんですか?

【石川】今年9月に、石川県金沢のほうにあるSLANTというギャラリーと出版をやっているところの企画で、山に行ってきて。急にですね、大阪で展示してる時になんか「ヤバいことしたい?」って来て。日村さんって言うんですけど、そのギャラリーの方。「もっとビリビリする?」みたいな感じで言われて「何するんですか?」「まだ何も決まってないけど、何か面白いこと一緒にやろう」って言うので、まぁ面白いんだったら、みたいな感じになって、話来たのがサバイバル登山。サバイバル登山っていうのは、できるだけ道具を少なくして、人が通らない整備されていない山を越えていく、っていう登山で。でも全く何も持っていないわけじゃなくて、最低限の装備、服もそれなりの物を一応着て、食事も米と塩とか調味料みたいなのは持っていって。ただそれが、限られた最低限の物ってことなんですよね。テントは無いけど寝袋はある、みたいな。できるだけ自分の体で登山をしていく。道具じゃなくて体で山を感じる、という登山をしてきたんですね。

【與那嶺】それで写真を撮ってきたんですか?

【石川】見てみます?

【與那嶺】はい。

【石川】これ、年明けぐらいに写真集を作って、展示会もいろんな所でやろうと思ってるんですけど。

【與那嶺】新鮮に感じますね。石川さん、ポートレートの印象があるので、緑が写っていると。

【石川】そうですよね。ちょっとした意地悪ですよね。本人が言ってたんですけど、人ばっかり撮ってるから人いない所に送り込みたかったって。