2015年に日本写真協会新人賞と木村伊兵衛賞を受賞した沖縄県出身の写真家、石川竜一さんの写真集『adrenamix』発売を記念したトークイベントが2015年11月28日、那覇市のジュンク堂書店那覇店で開かれた。石川さんをテーマに番組を制作した琉球放送の與那嶺啓アナウンサーが聞き手を務め、石川さんの多彩なエピソードを引き出した。トークのほぼ全文を書き起こし、再現する。

【與那嶺】これ、僕が取材してる時一回体験みたいのがあったんですよね。本番で行く前にリハーサルで山に登ってみようって時にちょうど取材していて。結構過酷で大変そうで。

【石川】そうですね。連絡はいただいたんですけど、企画のSLANTの方も、あと僕をエスコートしてくれる登山家の方も、「いや無理でしょ」と言っていて。登山家の1人に案内してもらったんですけど、その人に「山って厳しいよ、案内することはできるけど君の命までも守れないからね。そのつもりで来て」って。そんなに高い山ではないから迫力とかはないんですよね。でも一つ一つの行動がヤバくて。公園の隅に生えてる雑草みたいなものにしがみついて崖を上っていったりするんですよ。そういうちっちゃい草とかでも、上に引っ張るんじゃなくて押しながら引っ掛ける、みたいにやれば結構な重量まで耐えられる、ってことがあったりとか。そういうのをやりながら上って行って。プルプルしながら振り返って、たまに振り返って写真を撮って。

【與那嶺】危ない・・・。

【石川】そんなに高かったりはしないんですけどね。

―ここで山で撮った写真を見ながらの石川さんの解説がありました。(省略)―

【與那嶺】こういう写真を撮るっていうのは、どうでした?

【石川】はじめは人もいないし、見てる物が全部違うっていうか。やっぱり何撮ればいいか分からないし。でもなんでもはじめは何撮ればいいか分からないので、とにかく撮ればいいと思ってるので。気になったら撮ってって。これは見えづらいけど、ここに鳥の巣があったりするんですよね。そういうのとかを自分なりに撮ってって。2回山に行ったんですけど、2回とも2日目でカメラが1台ダメになって。気候があんまり、湿度とか気温とかで僕がいつもメインで使ってる方のカメラがバグっちゃって、サブで持っていってたカメラで撮っていく感じになるんですけど。

【與那嶺】結構夜遅くまでずっと?

【石川】いや、日が落ちる前には山登り終わって、テントではなくてこのタープっていう雨をしのげる生地みたいなのを張ったりする。フライパンも持っていくんですよ。登る途中にいたカエルを料理してもらって。

【與那嶺】うわ、すごい。

【石川】クマのふんがあったり。クマのふんがある場所は、本当はあんまり、クマが出入りしている場所だから危ないんだけど、でも大丈夫だよっていうからそこでテント張ったんですけど。

【與那嶺】こういう過酷な状況下って、どんなことを思いながらシャッターを切るんですか? 写真を撮ってやるぞって気持ちが強いのか、足場が心配だなとかよぎったりするのか。

【石川】うーん。撮ってやるぞって気持ちより、怖いのが大きいですね。僕は。心配だし・・・撮れないっすよね、みたいな。いやコレ無理でしょ、みたいな。壁にへばり付きながらプルプルって写真撮らないでしょ、みたいな。そんなのが僕は強かった。「ハァ?」ってなりながらまぁ撮りますけど、でもやっぱ怖いですよ。慣れていけば違うんでしょうけど。あんな高い山とか登ってる人っておかしいですよね、頭。心か? 慣れるといろんなことがマヒするんでしょう。

【與那嶺】そういう免疫がついてないと行けないですよね、なかなかね。

【石川】そういう人からしたら、車の運転も一緒だって言ってましたけどね。自分がコントロールできないものがたくさんあって、それがごまかされてるだけであって、全然危ないしちょっと間違えたら死ぬし。

【與那嶺】まぁそうですね。

【石川】山もそれと変わらない、みたいな。でも慣れてない人からするとからするとそれは違うよって思いますけど。

【與那嶺】いやいやいやって突っ込みたくなりますね。でもこれで自然の中で石川さんがどういう感じでカメラを通して表現しているのかというのが写真集で見られると思いますから。これは年明けを予定している?

【石川】年明けですね。

【與那嶺】では、そろそろ時間が来てしまうんですけれども。今後どうしていきたいとかありますか? 今はまた沖縄で撮影を?

【石川】はい、沖縄で撮影してます。

【與那嶺】」山に行ったり、パリに行ってることもあったし。結構忙しく県外に出てやってることも多くあると思うんですが、最近は沖縄県内を回る時間も少し出てきましたか?

【石川】そうですね。今の予定は「横浜市民ギャラリーあざみ野」という美術館で1月末から2月いっぱい個展をさせてもらうことになってて。それと六本木クロッシング(森美術館の企画展)にも出させてもらったり。あと写真集が1月ぐらいには出てるので、その刊行記念の展示会が2月に本土のほうで。沖縄での予定っていうのは今のところ決まってはないんですけど、森のやつも沖縄でやりたいなっていうのはあるので。先の話になりますけど。でも7月くらいの那覇の泊のイベント、與那嶺さんに取材してもらった展示会で今発表したものはひととおり出てて、これから先の東京とか横浜とかの展示会はその作品の中から、ってことにはなってるので。あとは、ちょっとだけ映像の最後のほうで出てきた、今沖縄で撮り続けてるやつも撮っていく、っていう感じですね。

【與那嶺】忙しいですね、いろいろと目白押しで。また沖縄で撮影しているというのが聞けてすごくうれしいです。

【石川】沖縄で、というか、沖縄にいるので。沖縄でやってます。東京行った時も同じように撮ってるし、大阪行けば大阪でもやるし、という感じです。生活してるのは沖縄ですし、出る予定もないし。

【與那嶺】やっぱり、石川さんの目を通して見る沖縄っていうのが好きで取材に行っているのもあるので、沖縄で撮っている写真というのをまたいくつか写真集で出してもらえたらうれしいです。1ファンとして期待しています。今日はたくさん会場にお客さんもいらっしゃっているので、このへんで質疑応答の時間とさせていただきます。なにか石川さんに聞きたい方どうぞ挙手して下さい。

【石川】みんな、どうせその辺で飲んでるでしょ?って(笑)。どうせ来週当たりウチ来るでしょ?って思ってるんでしょ。

【與那嶺】あの、石川直樹さん(タイムス紙面で対談していた写真家の方)ってこれから沖縄に住まれるんですか?

【石川】どうなんですかね? 一応、そんな話は聞いたことがあって。はっきりとは僕も聞いてないですけど、そういうことは考えてるっぽいですね。

【與那嶺】すごいですね。こないだの「フォトネシア沖縄」ってイベント、僕取材行けなくてすごい惜しいことしたなと思ってるんですけど。石川直樹さんという風景写真を撮ってらっしゃる方が来て、あと川島小鳥さんも来てね。めちゃくちゃ豪華なメンバーでやってるなと思って。

【石川】でもフォトネシアも沖縄の参加者めっちゃ少なかったんですよ。沖縄ってこんな感じあるよねーって。何かを勉強するってことにコンプレックスというか、抵抗があるって感じなのかな。自分も確かにそうだったんですよ。

【與那嶺】僕もちょっとそうだと思います。そこに行ってるのを身内に言われて「いーっ」って言われるのが恥ずかしいとか、そういうのがあるんじゃないかと。僕は最近やっと慣れましたけど。

【石川】フォトネシアだけではないですけど、外に出て元気に暴れるのも、机に座って勉強するのも、どっちも一生懸命やれたらいいなぁって自分では思ったりする。というか自分に対してですけど。フォトネシア行って、やっぱりあーそっかー、ってなりましたね。