【この時代のおもな書籍】

■『大琉球写真帳』(大琉球写真帖刊行委員会、1990)

 行動するカメラマン・石川真生が中心となって全県的に呼びかけ、沖縄の家庭に眠っている写真やアルバムを提供してもらいまとめた写真集。プロの写真集とはひと味もふた味も違って、沖縄の近代・現代史を庶民が提供した写真で振り返るというので、当時随分話題となった「自費出版」である。

■『神々の古層』全12巻(比嘉康雄著、ニライ社、1989~93)

 沖縄の古祭祀の世界にどっぷりと浸かり、神への畏敬と、宇宙としてのシマ社会を語って倦むことのなかったカメラマン比嘉康雄。熟達した写真家としての仕事ぶりは当然のことながら、民俗学者としての風貌も兼ね備えていた。本書はその両者がいずれも徹底しているという点で、一人の人間の中で稀に見る出会いを果たした作品といえる。現代を切り取りながらもモノトーンの写真から立ち現れてくるものは古代の人々の生きざまそのものではないだろうか。シリーズの出版開始は1989年、12巻で完結したのが1993年。足かけ5年を要したこの労作は小泉八雲賞をはじめ数々の賞に輝いた。

■『アコークロー』(宮里千里著、ボーダーインク、1991)

 エッセイスト・宮里千里のデビュー作。もともとはごく私的な個人誌であった「アコークロー」に載っていた傑作エッセイ群をまとめたもの。沖縄の生活文化を、独特の軽やかで「カクシン的」な視点と自由な文体で語るスタイルが話題となり、沖縄タイムス出版文化賞を受賞した。

■『琉球語の美しさ』(仲宗根政善著、ロマン書房、1995)

 国語学者にして、『沖縄の悲劇―ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』の著者としても知られる仲宗根政善の遺稿集。郷土の言葉、生活文化、そして家族に対して深い愛情に満ちた思いを込めた珠玉のエッセイがまとめられている。言葉は人の一生、地域の歴史と切りはなすことのできない大切なものであることが染みてくる本。

■『高等学校 琉球・沖縄史』(新城俊昭著、編集工房・東洋企画、1997)

 高校生のために書かれた、琉球・沖縄史をまとめた「歴史の教科書」。1997年の初版以来、最新の情報を加味しながら改訂版が何度も出されている。県内高校においては副読本として読まれているが、沖縄の通史が丹念にまとめられていて、一般の読者にも人気も高い歴史書である。 

■『ロックとコザ』(沖縄市企画部平和文化振興課/編集、沖縄市役所、1998)

 沖縄国際大学社会学科ゼミの学生と石原昌家教授らが、基地の街・コザの歴史を、一時代を築いたオキナワン・ロックの当事者たちのインタビューから見つめるというユニークな一冊。オキナワンロックミュージシャンたちの音楽活動・生活史に限定して、個人史としてとりまとめていて、ジョージ紫、宮永英一、川満勝弘、喜屋武幸雄ら、オキナワン・ロックの重鎮のインタビューが、行政の資料集としてまとめられた極めて貴重にして楽しめる内容となっている。

■『沖縄コンパクト事典』(琉球新報社編集、1998)

 1990年代は、事典形式で沖縄を紹介するさまざまな本が生まれたが、本書もそのひとつ。沖縄に関する3400余の項目を収録しており、「手軽に利用できる沖縄事典を」という声にこたえて琉球新報社が出版した。観光客だけでなく県民にとっても、地元の歴史・文化を身近において再確認することができる、文字通りコンパクトな事典である。

【本稿の出典:「沖縄県産本のあゆみ」(C)沖縄県産本ネットワーク】