拝みが終わると、次は品出しだ。卸業者から仕入れた野菜を並べ、初子さんの大きな冷蔵庫の中からトマトやジャガイモを取り出しては
ゆっくりと店頭に並べていく。


 ダンボールや布がかぶさっていた売り場の棚が、少しずつ緑や赤の野菜に埋め尽くされてゆく。また作業を終えたら、ひと休み。「ネズミが食べるから、ちゃんと野菜は保管しないと。ゴキブリもいるね」。特にネズミが好むジャガイモは、保管に気を使う。

 品出しが終われば、自ら仕入れに歩く。「内地のモノは、そこの青果店で仕入れる」と市場近隣に構えるお店を指した。


 初子さんのお客さんは、個人経営の店主が多い。「今となってはスーパーや大きな店に“同化”されてしまって個人の店は経営が持たないさ。
 継ぐ人もいないから、お客さんが減っている。昔は個人の店が多かったから、農連は繁盛していたけど今は寂しいね」と時代の流れを憂う。


しかし、それでも「ここに来ると楽しい。市場のみんなとも会える。若い人と話が出来るさ。8時ごろになったら食堂からご飯とってきて食べるよ。家に居ても、テレビ見て、寝てるだけ。同じくらいの年の人たちはゲートボールしたり、施設に入ったりしてるでしょ。私にとっては農連が一番いいよ」と生き生きと語る姿がある。


 「ここはいろんな人も通るよ。最近、女の子が通ると、ファッションショーみたいだねー。いっぱいおめかしして」。63年間市場で過ごしてきた初子さんには、さまざまな楽しみがある。


 農連市場が新しいビルに建て替えられると、もっと多くの若者が来るだろうか。若い女の子がもっと増えて、今まで以上の”ファッションショー”が見られるかもしれない。農連市場を見守ってきた初子さんは、これからもここで、楽しい時間を作っていくのだろう。