シリコンバレーに“レジェンド”といわれる日本人がいる。67歳の熊谷芳太郎氏だ。スタートアップは9割以上が失敗するといわれる中、これまで熊谷氏がに参加した6社がM&Aされたり、株式公開されたりしている。2009年には、小型ビデオカメラ「Flip video」を扱う「PURE DIGITAL(ピュアデジタル)」は、コンピューター機器を開発する「cisco」に約590億円で買収された。現在は、腕時計型歩数計のFitibit(フィットビット)を手がけている。
 ビジネスで成功する秘訣(ひけつ)、気になるFitbitの今後は?
 次世代のビジネスリーダーを育成するプロジェクト「Ryukyufrogs(琉球フロッグス)」のメンバーに、熊谷氏が答えた。
―株価1兆円超のFitbitとは?

 今は腕時計型の歩数計を扱うFitbitに携わっている。
 7年前、仲間と万歩計のビジネスについて話し始めた。最初、任天堂のゲーム機を使った体の動きを見て、センサーを賢く使って健康につなげたいというのがアイデアのきっかけだった。
 4年前、歩数計のシェアはオムロンが90%以上、Fitbitは1%だった。当時の競争相手はNIKEだったけれど、シェアが6%台から伸びなかったので、歩数計事業をすぱっと辞めちゃった。今はFitbitがシェア約85%とオムロンを逆転した。


―オムロンに勝てたワケ

 歩数計の市場は「オムロン」が長いこと牛耳ってきた。

 そこで、Fitbitは、買ったら長く使ってもらえるような非常に簡単で使いやすい製品を目指すことにした。ユーザーのコミュニティーサイトにも力を入れた。なぜなら、売ることやアプリをダウンロードしてもらうためには、口コミ、使いやすさが最も大事だから。
 使い始めた人は、コミュニティーサイトで製品について話してくれている。僕にとっても使っている人たちの声が毎日読めるは本当にうれしい。日本の人たちもいっぱい更新してくれている。


 例えば、私のFitbitは、私のデータ以外に友達20人とデータを共有している。私の母親は仙台にいるけれど、歩いているどうか分かる。私が買えば、家族もFitbitを購入し、家族の友達も購入する。だから、宣伝よりも口コミが広がる。


―日本が世界で競争できない理由

 日本と米国の違いはいくつかある。


 日本のメーカーはハード面は非常に得意。製品はきれいだけど、最終的にはほとんど売れなくなってしまう。日本が世界で競争できないのは、「アプリ」がないからだ。
 私がこれまで手がけた製品はすべて簡単なもので、誰でも作れる。しかも、シリコンバレーには非常にユニークなソフトを作る人材がいる。その人材をうまく活用して、製品をより使いやすくしていく方針でやってきた。


 たとえ失敗しても、悪いレッテルを貼られることが絶対ないのも違うところ。スタートアップをしても結局、ほとんどの人が失敗する。しかし、失敗した人がいっぱい集まると、物事に対して素早く動ける。失敗した経験は成功するために非常に生きてくる。日本の場合はあまり失敗経験のある人がいないから、スタートアップを成功させるのは非常に難しい。


 もう一つはストックオプションだ。日本の場合、オーナーが握ってしまい、社員はほとんど持っていない。日本人はお金のために働かないというけれど、報酬があったら絶対頑張るし、私だったら成功を分かち合うような制度にする。