公共交通の利用促進を目的に、沖縄県初の交通系ICカードとして登場した「OKICA(オキカ)」。2014年10月に沖縄都市モノレール(ゆいレール)で先行導入され、2015年4月27日には県内路線バスでの運用が開始された。ゆいレールと路線バスの相互乗り入れで利便性の向上が図れる一方、Suica(スイカ)など本土の交通系ICカードと互換性がないサービスに一部で疑問の声が上がっている。

 県内独自のシステムの導入に至った理由と今後の可能性について、発行元である沖縄ICカード株式会社の高嶺綾(たかみねりょう)さんに話を聞いた。

 

全国と互換性がない! どうして?

 ─本土の交通系ICカードと連動していないのはなぜですか。
 「第一にコスト面の問題があります。Suicaなどの本土の交通系ICカードに連動させるとなると、現行の独自開発に比べ導入費だけで2倍、ランニングコストだけで3倍掛かってしまいます。

 現在、車社会の沖縄に拠点を持つ各交通事業者の出資で賄われているため、体力的に困難との判断です。全国対応をして本土でチャージされた金額を沖縄で落としてくれる経済効果を加味しても、ランニングコストで圧迫されてしまいます」

 コストの問題があるにせよ、観光立県をうたっている沖縄県において、この県内独自仕様は県外観光客の方にとっては不便を感じるものではないだろうか。十分に運営側もそれは予想していたはずだ。それを差し引いてもなぜ独自システムでの導入に踏み切ったのか。

 「OKICAの導入は県の一括交付金事業によって進められています。よって県民の利益となるサービスの提供ということを前提に進めていかなければなりません。独自システムの採用は、同時に独自サービスの提供を指します」

 「沖縄ではこれまで、様々な割引が適用された券種が発行されてきました。東日本大震災で沖縄に避難して来た方に発行される『ニライカナイカード』、離島から進学のために本島に渡った生徒のための『15の春』の割引などがあり、これらを引き継ぐ意義があります。これが独自システムにより継続が可能です。また全国対応となると、バス路線の変更申請が2年前には必要になるなど、バス社会の沖縄にとっては路線運営の制約が厳しくなるという事態も想定されます。これらの理由から独自システムの採用に至りました」

 

商業施設のポイントとも互換可能に?

 上記のことからOKICAの仕様は、"実現可能な予算内での県民向け多種多様なサービスの構築"と言うことができる。

 今後の展望として様々なコラボレーションが可能だと、高嶺さんは話す。
 「やろうと思えば可能性はいくらでもあります。例えば、電子マネーの機能はもちろん、商業施設のカードと一体化してポイントに互換性を持たせることもできますし、OKICAの機能が付いた社員証に更にタイムカードの役割を乗せることもできます。オリジナルデザインで披露宴の引き出物もありですね。交通の利便性の拡大で言うと、島嶼地域ならではのフェリーと連携を図ることも可能です。同様にカーシェアリングやレンタサイクルにも繋ぐことができれば細やかな移動も1枚のICカードでスムーズに利用できます」

 沖縄県内での利用に特化すれば、オールインワンの機能も期待できるOKICA。
 利用ごとに貯まるポイントが全国でも類を見ないほどの高還元率を実現し(図1)、日常的に使ってもらえるような工夫を凝らしている。