2013年5月、東京都小平市で住民投票が実施された。半世紀前に東京都で作られた道路計画の見直しを求めるため、住民たちが署名を集め、投票までこぎつけた。翻って、沖縄の辺野古移設問題。民意が明確な「ノー」を突きつけ続けているにもかかわらず、政府は工事を強行している。切迫した状況の中、住民は行政とどう向き合い、社会をどう生きていけばいいのか。小平市の住民運動に携わり、「民主主義」を追求する哲学者・國分功一郎氏(高崎経済大学准教授)のインタビューを2回にわたってお届けする。(聞き手・デジタル部與那覇里子、社会部下地由実子)―哲学への期待が高まっているように思えます
「僕が学生の頃は、哲学って役に立たないというイメージがありました。でも今は、僕の仕事が増えています。哲学が必要とされているのは不幸な時代だからです。根本的な原理原則が揺らいでいるために、社会で原則的にどうおかしいのかということを哲学が論じなきゃいけないのです。『英雄がいない時代は不幸だが、英雄を必要とする時代はもっと不幸だ』をもじって言えば、哲学がない時代は不幸だが、哲学を必要とする時代はもっと不幸だという感じです」
「難しいことを考えないで生きていける方がいいんです。どういう風に再分配をしつづけるかということを考えたら哲学的な問題になるわけですからね。そんなこと考えないで税収が増えていくほうがいい時代なんです」

―今後、私たちはどう考え、生きていけばいいでしょうか
「今は、『従え』という上からの圧力に対し、『従いたくない』と抵抗するだけで精一杯という感じでしょう。けれども、今後、大事になるのは、こうするとうまくいきますよというマネジメントの視点です。反対の立場の人間がなかなか提案にまで至れない状況を変えないといけない。僕が学生の時は、新左翼的な思想がまだ強かった時代でした。とにかく打倒、打倒というような感じです。でも、状況は変わっています。権力を打ち倒せばいいという人たちは発言権がなくなっていっていっていることからも分かります」
「小平の住民運動が注目を集め、好意的に受け止められたのは、反対、反対という糾弾型だけではなく、提案型だということがありました。みんなで青写真を描こうという雰囲気をまず作っていく。そして、マネジメントの視点で次のステップを具体的に考えて提案していく。そうすると、共感する人は増えますし、無視できなくなっていきます」
「僕は4月から英国にいくんですが、日本の政治の現状に慣れてしまいたくないという気持ちがありました。一度日本を離れて、フレッシュな気持ちで日本を見て、どこがどうおかしいのかをきちんと言えるようになりたいと思っています」