政治の堕落。きつい言葉だ。恐らくこれは辺野古埋め立てに賛成した仲井真弘多前知事、自民党沖縄県連の国会議員、県議会議員のすべてに向けられているのだろう。選挙のときは票が欲しいから普天間の「県外移設」を公約し、当選したらあっさり公約を破棄して平気でいられる。これは政治の詐欺行為に等しい。堕落どころか犯罪だと思うのだがどうだろうか。
 しかもいくら政治が妥協の産物だとしても、安保の負担をこれほど押しつけられた沖縄がさらに辺野古埋め立てを受け入れなければならない理由がまったく分からない。
 菅官房長官は翁長知事にこう説明した。「わが国を取り巻く安全保障環境、極めて厳しい中にあって、まさに沖縄県民のみなさん方々を含めて国民の安全を護るのは国の責務だという風に思っている。日米同盟の抑止力の維持と(普天間の)危険除去、こうしたことを考えたときに、辺野古移設というのは唯一の解決策であると政府は考えています」。
 日本周辺の安保環境が悪化している―。日米同盟の抑止力を維持しなければならない。そして普天間返還も実現させたい。だから辺野古しかない、という主張である。もっともらしく聞こえるが、果たしてその説明は論理的なのだろうか。
 まず普天間飛行場を使っているのは海兵隊であることを踏まえておきたい。海兵隊は沖縄に駐留する米軍兵力の6割を占め、基地も既述の通り7割強を占有している。仮に海兵隊が沖縄から出て行くと、残るのは極東最大の空軍嘉手納基地、海軍ホワイトビーチ(うるま市勝連)、陸軍トリイ通信基地(読谷村)くらいだ。これだけ残して海兵隊が沖縄から仮に本土に移転したら、抑止力が大きく低下するのだろうか。まったく心配無用だ。
 なぜなら既述の通り、海兵隊が出撃するときの輸送手段は艦船か輸送機だが、そのいずれも沖縄には存在していないからだ。艦船は長崎県佐世保港であり、輸送機は米本国から飛んでくるのを待つしかない。政府は沖縄に海兵隊が駐留する理由について、沖縄なら北朝鮮と台湾海峡の両方を同時に警戒し、対処できるいいポジションにある、と説明するが、それも信憑性が薄い。
 ネット地球儀で距離を測ってみれば一目瞭然だ。沖縄から北朝鮮の首都平壌まで約1416㎞、台湾の台北までは645㎞で合わせて2051㎞の長さがある。これが海兵隊にとってどう有効なのだろうか。
 他地域と比較すると、長崎県佐世保から平壌まで740㎞、台北まで1200㎞で計1940㎞、佐賀県は平壌までが770㎞、台北が1232㎞で計2002㎞、福岡だと計2006㎞になる。いずれも沖縄より合計距離が短いのだ。すると移動距離は沖縄が取り立てて好条件にあるとは言えないだろう。いずれかに近ければ、他方からは遠いのだから、沖縄が両方に対して適地であるとする説明に説得力はない。熊本も2054㎞だから沖縄と3㎞しか変わらない。
 仮に朝鮮半島で北朝鮮が暴走した場合、海兵隊を運ぶ船が佐世保で錨を上げて出港し、沖縄に南下して兵員と物資を載せて、再び北上しなければならない。これは合理的な部隊配置なのか。