森本敏元防衛相は3月29日のNHK日曜討論で、海兵隊は日本の西海、九州か、四国のどこかに1万人が常時いて、地上、ヘリコプター、後方支援の機能を包含できればいい、と語った。日本屈指の安保専門家で防衛大臣まで務めた森本氏がそう証言したのだから反論できる政治家や専門家がいれば話を聞いてみたいものだ。 海兵隊は本土でも機能を維持できることは常識となったいまも「県外移転」が選択肢として話題に上がらず、沖縄内の問題処理が「唯一の解決策」となるのだろうか。それは翁長知事が指摘したように「日本の政治が堕落している」からだろう。中谷防衛相が知事を批判したのは、天に唾する行為だ。日米安保の重要性を認識し、自身の選挙区である高知県に海兵隊を受け入れる覚悟が中谷大臣にあるだろうか。中谷大臣自身、大学生のインタビューに答えて、海兵隊は本土に駐留してもいいのだが、どこも受け入れない、と真実を明かしている。インタビューは動画サイトで閲覧可能だ。▼ぼくらが見にいく!在日米軍基地 沖縄に行ってきた!
https://www.youtube.com/watch?v=hjA9xI8jJGw いま中谷防衛相と同じような心ない見方が一部の言論界にはびこっている。安保だ、抑止力だといった言葉を使えば優越感に浸っていられるのだろうか、辺野古に反対する沖縄人を幼稚だと決めつける。そして上から目線で諭すように、「もっと日本の安保、抑止力を理解してね」と言う。 菅長官は沖縄の負担軽減についてこう語った。「空中空輸機15機全部を昨年、山口県の岩国飛行場に移した。緊急時における航空機の受け入れ機能も九州へ移す予定で話を進めている。結果的に辺野古に移転するのはオスプレイなどの運用機能だけだ。オスプレイの訓練についても本土でできる限り受けたいと思っている」。いっそのこと森本氏が語るように海兵隊すべてを持っていけば話は早いだろうに。 菅長官は続けて、海兵隊の約半分に当たる9000人がグアムなどへ分散配置する日米合意についても触れた。この米軍再編をどう分析するかが重要なのだが、日本のメディアはほとんどそれを怠っている。海兵隊の兵力が半減されることと、「抑止力の維持」は矛盾してはないか。にもかかわらず普天間が沖縄基地の解決策であり、日米同盟を維持するために必要であると書く全国メディアがあるが、恐らく彼らは海兵隊のなんたるかをまったく理解していないだろう。 政府は尖閣諸島をめぐる中国との対立を引き合いに沖縄米軍基地の重要性を強調する。菅長官は「昨日も尖閣諸島に公船が侵入しておりました」と翁長知事に伝えた。それほど頻繁に中国の公船が近づくなら、日米同盟の抑止力はどうなっているのか。米国政府は無人島の尖閣を奪い合うため若い米兵の命を危険に晒すことを「バカげている」と考えている(ジェフリー・ベーダー元アメリカ国家安全保会議アジア上級部長)。仮に尖閣防衛で日米同盟が発動しても、離島奪還は海兵隊の仕事ではない(在沖米海兵隊ウィスラー司令官、2014年4月)。制空権と制海権を維持していれば敵は島に近寄れないし、上陸したとしても輸送路を断てば兵糧攻めで事足りる。それは空軍、海軍の仕事であり、地上戦力の海兵隊ではない。ことほどさように政府の説明は疑わしい。それでも政府は圧倒的な宣伝力で尖閣防衛のために沖縄基地が重要だと国民に思い込ませ、辺野古埋め立てに異を唱える沖縄が孤立するように仕向ける。だから権力は怖い。本来ならメディアが権力を監視する役割を果たすべきだが、こと日米同盟、基地問題になるとその機能が発揮されない。 沖縄基地の真相は、在沖米軍の中で最大兵力、最大の基地面積を占める海兵隊は沖縄でなくても機能するが、日本国内では米軍の駐留を拒否する-ということが沖縄基地問題の深層に隠されている。真実を見えなくするマジックワードが「抑止力」である。同盟は大事だと言いながら基地負担を沖縄だけに押しつける。そして基地問題にあえぐ沖縄に対し、「もっと安保の大切さを考えてほしい」と詐欺師のような言説が氾濫する。 沖縄はこうした諸々の無理解、レッテル貼りと対峙しなくてはならない。難儀なことだが、自民党県連幹事長を務めた翁長知事が政府を議論の土俵に乗せることができれば、沖縄基地問題の本当の姿が見えてくるかもしれない。問題解決はその向こう側にある。