日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)の失効が直前になって回避された。韓国政府が、協定を当分維持することを決めたと発表した。

 冷え切った日韓関係を修復し、対話へと転換するきっかけにしてほしい。

 協定は軍事上の機密情報を提供し合う際に、第三国への漏えいを防ぐ取り決めだ。

 北朝鮮の急速な核・ミサイル開発に伴い、米国の求めに応じて2016年11月に結んだ。北朝鮮軍やミサイル発射の動向などについて日韓はそれぞれの得意分野を生かし、米国を介さず、情報交換して分析を進めてきた。

 韓国が譲歩したのは、協定維持を求めた米国がエスパー国防長官らを次々訪韓させるなど強い働き掛けがあったからだ。

 協定は東アジアにおける日米韓の協力体制の象徴である。仮に失効していたなら北東アジアの安全保障体制が揺らぐことになりかねなかっただろう。

 だが協定を維持することで日本の輸出規制の見直しにつなげたい韓国と、協定と輸出規制は別問題だとする日本との隔たりは大きい。

 韓国も協定は「いつでも終了させられる」と交渉カードに使う構えで、先行きは不透明だ。

 両政府は輸出規制問題で局長級対話と課長級準備会合を開くことで合意した。対話を始める態勢ができたことを歓迎したい。絡み合った糸をときほぐすきっかけにしなければならない。

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 昨年10月、元徴用工訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる確定判決を出したことが日韓関係が急速に悪化した発端である。日本は今年7月、フッ化水素など半導体材料3品目の対韓輸出規制強化を発動したのに続き、8月には輸出管理での優遇対象国から韓国を除外した。

 これに対し韓国は8月「両国間の安保協力環境に重大な変化をもたらした」と協定破棄を通告していた。

 日韓対立の根本にある徴用工訴訟問題では歩み寄りはみられない。茂木敏充外相と韓国の康(カン)京(ギョン)和(ファ)外相による23日の会談でも日本側は「1965年の日韓請求権協定で賠償問題は解決済み」との立場を強調。原告側が差し押さえた日本企業の資産が「現金化されれば、日韓関係は深刻な状態になる」とくぎを刺した。康氏は「意見の隔たりは大きい」と認め、「議論を続ける必要があるとの認識で一致した」と語った。違いがあるからこそ対話の継続が重要だ。

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 日韓関係は65年の国交正常化以来、最悪といわれる。首脳会談が開かれない状態が続けば、事態は深刻化するばかりだ。実際、韓国からの訪日客は3カ月連続で前年同月と比べ半減し、市民交流にも影を落としている。

 日韓外相会談では、12月下旬に中国四川省で開かれる日中韓首脳会談に合わせ、安倍晋三首相と文(ムン)在(ジェ)寅(イン)大統領の会談を開く方向で調整を進める方針で一致した。

 両首脳には胸襟を開いて信頼関係を醸成し、歩み寄る努力を求めたい。