沖縄小林流空手道の範士十段で米国志道館空手道協会、伊波清吉会長の「トーカチ祝い」を記念した国際親善沖縄空手友好演武大会とセミナーが8月、豊見城市の沖縄空手会館で開かれた。

 伊波会長は西原出身で1974年からは米ミシガンに在住の経験がある。大会にはアメリカ、カナダ、南米、イスラエル、ロシア、ヨーロッパ、グアム、その他の地域から300人余りが参加。8月22日には、沖縄入りした首里系統小林流の国際空手家たちがそろい、県知事や各報道機関を表敬訪問した。沖縄に帰郷中だった私も、その訪問に案内・通訳として参加した。

 その晩から3日間、中身の濃いセミナーを終え、翌日は那覇で伊波会長の盛大なトーカチ祝いを行った。その後は観光日程で、首里城正殿前で、空手の「前屈立ち」のポーズを取り記念撮影した。それが首里城の最後の思い出になった。

 これまで常に自分を慰め励ましてきたのは、世界に誇るウチナー武道の空手だった。だが今回の首里城の炎上では、テレビで見た火災の映像が運転中も脳裏にちらつく。

 去った11日には米ニューヨークを訪れた県議員たちと懇談会を行い、12日はイベント交流をした。議員団長の渡久地修氏の説明は最新の現状の辺野古と普天間だった。さらに、首里城が炎上し、崩壊していく写真入りの新聞も数枚手渡されたが、開くことができなかった。帰宅してから夜中すぎに新聞を広げた。自分のウチナーンチュとしてのアイデンティティーの土台には首里城が無条件にこびりついていたのだと気付いた。

 それは必ずしも首里城の建物だけでない。車を運転しながら琉球古典を聞いていても無意識に宮殿の雰囲気を想像する。三線、琴、笛、太鼓の演奏と歌が流れる。琉球人として、歴史的な真・善・美に奥深い尊厳を抱く。それが私にとってはいかに強い慰めになっていたかが認識できる。それが琉球魂である。

 ニューヨーク在住の本土出身者が首里城について「堂々とした優美な龍の威厳、琉球の政治の場であり聖域でもあった。女の力が底支えしている奥深いパワーを持った場所だ」と話してくれた。

 われわれの価値観にはそれぞれ相違があるが、何事も失って初めて大切さを痛感する。今、琉球古典音楽を聞きながら原稿を書き続けているが、やはり「滝落とし」が流れると、首里城の御庭での演武する空手家たちの迫力と情熱を感じ、ウチナーとぅまじゅん(沖縄と共に)立ちあがろうとの意識を強く感じる。(てい子与那覇トゥーシー)=第4月曜日掲載

(写図説明)国際セミナーで沖縄滞在中に首里城で演武する小林流空手家たち=2019年8月26日(パトリック・ヨォッキー撮影)