●賃金差も大きい


 賃金についても正規・非正規間で差が大きいのが現実です。2012年の就業構造基本調査をもとに推計してみると、沖縄県内の正規職員の方の平均年収は約328万円でした。一方、非正規職員の方は126万円で、約202万円の差がありました。そして、当然ではありますが、年代が上がることに年収の差は広がっていきます。20代の時は正規と非正規の方の年収差は100万円強だったのですが、30代になると170万円の差、40代、50代では260万円前後もひらいてしまうのです(図参照)。
 年代別に見ると非正規職員で最も高い年収の年代は30代ですが、金額は135.5万円にすぎません。20~50代を通して年収は125万~135万円程度で推移しています。非正規職員の賃金はほとんど上昇しないのです。
 この推計は非常に大まかな計算であり、就業時間などを考慮した数値ではないので、時間で換算すると正規と非正規職員の賃金差は縮小する可能性はあります。ただ、正規・非正規間の比較で最も大きな問題は、正規職員は年齢が上がるごとに賃金が上昇している一方、非正規職員は賃金がほとんど変化しない点にあります。
 社会生活を送る上では、ライフステージごとにそれなりの支出を必要とします。たとえば結婚、出産、子供の入学、親の介護など想像してみてください。一般的に、年齢が上がるほど支出金額は増大していきますが、非正規職員のままで賃金が変わらないとなると、それら支出を伴うイベント・課題を乗り越えることができません。また、その支出が不可能だと悟り、最初から結婚、出産など支出の伴うことを諦めてしまう方も出てくるかもしれません。
 冒頭で紹介しましたが、現在の経済社会において企業は国際間の競争にさらされており、単純に非正規社員を正規職員にするという解決方法の選択は難しいかと思います。定年まで雇用を保証するような企業は少なくなっていくと考えられます。しかし、同じ仕事をしているのにもかかわらず、正規・非正規という身分の差だけで賃金の差が発生するのは好ましいことだとは思えません。また、完全に雇用が不安定化するのは、個々人の人生設計を考える上でマイナスです。
 このような時代だからこそ、自らでビジネスチャンスを見つけ出し、起業し経営者としてチャレンジする人が増えていくことは望ましいと思います。一方では、起業のリスクを取りたくない、余暇や家族との時間を優先したいような方々も大勢いると思います。
 社会情勢の変化もあり、従来のように与えられた仕事を淡々と行っていれば安泰、という時代は過ぎました。しかし、個人的には、(抽象的な表現ではあるのですが)経営者になることを望まない「大多数の労働者」が、そこそこ働いた結果、そこそこの給与を得ることができる、という雇用環境、働き方の実現に向けた方向性を模索する必要があると思います。正規職員、非正規職員という二分法を超えて、新しい雇用形態、働き方を社会全体で本気で考える時期に差し掛かってきているのではないでしょうか。
 現時点では私自身も望ましい労働社会のあり方について、全体像を描くことができていません。私としても多くの労働者が安心して働くことができる労働環境とは具体的にはどのようなものなのか、といった点を考えてきたいと思っています。(了)