「高齢者による万引」が県内でも目立ち始めている。店側は防犯カメラの設置や見回り強化で対応するが、思うような効果が上がらない。今年9月、万引を繰り返して沖縄刑務所(南城市)で受刑中の高齢者3人に話を聞くと、社会との断絶や自分への諦めなど、経済的な困窮だけではない理由が浮かび上がった。(社会部・西倉悟朗)

万引を繰り返す高齢者。「社会に出ても人となじめない」と寂しそうに話した=9月24日、沖縄刑務所

生活保護10万円

■70代男性

 70代の男性Aさんは数十年前、仕事のために家族を離島に残し、単身で本島に渡った。それからはずっと1人暮らし。万引のほか、空き巣や置引を繰り返し、今回で受刑生活は11度目になる。家族は愛想を尽かし、子どもには電話の着信を拒否された。次第に誰とも連絡が取れなくなった。

 70歳を迎える手前でも万引で2度捕まった。盗んだのはいずれも千円以下のお総菜。借金はなく、10万円以上の生活保護を受給し、生活が苦しいとの実感はない。万引の理由は「何となく」。捕まる度に「またやってしまった」と悔やむが、繰り返すうちに罪悪感や後悔は薄れ、諦めの方が大きくなった。

 自治会や近所付き合いは全くなく、プライベートの話をできるような相手は1人もいない。常に「孤独」を感じていたという。

 出所したら、また1人暮らしに戻る。窃盗を繰り返す自分を変えようと、今度はボランティア活動に参加してみたいとも思う。

 具体的な計画は、まだない。それでも「人とのつながりを持ちたい。人の役に立ちたいし、相談相手がいれば何か変わるかもしれない」と、社会との接点を渇望する。

孤独を感じ衝動的に

■70代男性

 県外出身で70代の男性Cさんは、沖縄に移住して出会った女性と約20年間生活を共にした。60歳になったころ、女性が突然亡くなり、それからは1人暮らし。自身も心臓に病気を患い、仕事をするのが困難な状況になった。

 生活保護は約10万5千円。「生活が苦しい」と感じ、知り合いに頼み込んで借金をすることも度々あった。

 初めて万引で捕まったのは2年ほど前。コンビニで800円相当の酒を盗んだ。その執行猶予中、今度はいつも買い物をしているスーパーで缶詰や酒など、計千円以内の商品を万引して再び逮捕された。

 「万引目的でスーパーに行くわけではない。買い物に行き、お金が足りないと、ついつい盗んでしまう」。次第に「ばれなければ大丈夫」と思うようになり、軽い気持ちで繰り返したという。「金がなくなるとイライラして衝動をうまくコントロールできなくなる。それが万引につながっていたかもしれない」と自身の行動を振り返る。

 取材中、Cさんは「自分は精神が弱くてダメだ」「我慢ができない」と、自己嫌悪の言葉を繰り返し口にした。

 「何もできない刑務所生活は苦しく、もう戻りたくない。万引も絶対しない」。出所後は外の更生施設に入り社会復帰を目指す。

自分を変えようとしたが…

■60代男性

 60代の男性Bさんは2年ほど前、400円相当の発泡酒2本を行きつけのスーパーで万引して逮捕された。それまでも酒や漫画などを盗んで逮捕され、受刑生活は今回で5度目。多少の罪悪感はありつつも、「捕まってもいい」という開き直りが、再犯へと足を向かわせた。

 本島南部で両親と3人暮らし。約10万円の生活保護を受給し、食事などの基本的な生活は足りていた。盗んだ酒も、買おうと思えばできたはずだった。

 万引をしないために何が必要か。そう問われると、一瞬考え、「1人でいるのが良くない」。両親と暮らしてはいたが、全く言葉を交わさない日も多く、近所付き合いは皆無だった。

 自治会や断酒会への参加も考えたことがある。実際に4度目の受刑を終えた時はアルバイトを始めてみたが、周囲となじめず、他の従業員との会話はほぼなかった。「人と話すのが苦手な自分には無理」。すぐに諦めに変わった。

 一方で、誰かに助けを求めたい自分もいる。「万引しそうになった時、駆け込み寺のような、誰でもすぐに相談できる場所があってほしい」と話す。