東京で都営バスに乗っていると、割安で乗り放題のシルバーパスを利用する高齢者が目立つ。車内で顔見知りを見つけ、近況を尋ね合う。買い物や通院だろうか。短い距離で乗り降りする人も少なくない

▼年間2億3千万人余りを運ぶ都バスの路線数は130。どれも黒字なのかと思いきや、そうでもない。約65%が赤字で、主要拠点を結ぶドル箱路線が収益を支えていた

▼1路線で3億円もの黒字を出す稼ぎ頭がある東京なら、交通網を張り巡らすこともできようが、地方だとそうはいかない。不採算路線は減便や廃止を余儀なくされる

▼高齢ドライバーの交通事故を防ぐため運転免許返納を促す声が聞かれる。一つの対策に違いないが、返納後の移動手段をどう手だてするのかも同時に考えたい。返納したはいいが、家に引きこもりになったのでは、解決すべき課題が衣替えしただけだ

▼自動運転は期待が持てそうだし、公道を低速で走る電気自動車(EV)もそう。日進月歩の先端技術が、大都市と地方の交通インフラの格差に風穴を開けてほしい

▼本紙オピニオン欄で、高齢者が免許更新に後ろめたさを感じ、返納を迫る風潮に疑問を示す投稿を見かけた。人は誰しも慣れ親しんだものを手放すのは忍びない。人生の先輩の心情をおもんぱかりながら、あるべき方向を思案したい。(西江昭吾)