社説

社説[米「香港人権法」成立]民主化 後戻りさせるな

2019年11月30日 09:48

 香港の民主化を巡る攻防が米中関係を揺るがし始めた。

 香港の人権や自治、民主主義を支援する米国の「香港人権法」は、米議会上下両院で民主、共和両党の圧倒的多数で可決され、トランプ大統領の署名によって正式に成立した。

 同法は、香港の高度な自治を認めた「一国二制度」が順守されているかどうかを米政府が毎年検証すると定めている。人権侵害に関与した当局者に対しては、独自に制裁を科すことも可能という強烈な対中けん制策だ。

 香港問題に関する米国の政治的な立ち位置をはっきりさせたのである。

 中国政府は「内政干渉」だと激しく反発、「必ず対抗措置をとる」とすぐさま報復する考えを明らかにした。

 トランプ大統領が、米中貿易協議に悪影響を与えることを懸念しながら、あえて法案の成立に踏み切ったのはなぜなのか。

 足元の共和党の支持を固めるため法案を成立させる一方、貿易協議への影響を最小限に抑えるため、法律を柔軟に運用し、決定的な対立を避ける腹積もりかもしれない。

 この状況を打開できるのは米国ではなく中国政府である。

 高圧的な態度に終始してきた中国政府が一度立ち止まって香港の人々の抗議の声に耳を傾け、香港政府と民主派の対話を後押しする。それが混乱を収拾する近道である。

 中国がそのような姿勢を示し行動に移せば、貿易問題と香港問題を切り分けて解決することも可能になるはずだ。

■    ■

 「逃亡犯条例」改正案を巡る攻防は、香港政府にとっても中国政府にとっても誤算続きだったのではないか。

 条例改正案を廃案にすると表明した後も抗議デモはやまず、ついに死者まで出してしまった。連日、国際社会に配信されたのは、警官の生々しい過剰警備の映像であった。

 香港政府が超法規的措置を発動して強引に制定した「覆面禁止法」に対し、香港高等法院(高裁)は「違憲」判断を示した。

 中国本土ではありえないことだ。司法の独立の重要性を香港市民にあらためて認識させたといえる。

 24日の区議会選挙は民主派が地滑り的な勝利を収め、議席の8割超を占めた。

 「一国二制度」が骨抜きにされ、抑圧と弾圧による香港統治が広がっていくことに「ノー」の民意を明確に示したのである。

■    ■

 民主派は5項目の要求を掲げている。香港政府は「逃亡犯条例」改正案の撤回には応じたものの、警察の権力乱用に関する独立調査委員会の設置や普通選挙の実施などはゼロ回答のままだ。

 中国政府や香港政府はここにきてもなお、強硬姿勢を崩していない。

 これ以上、香港社会の内部対立を深めないためにも、両政府は選挙結果を重く受け止め、対話による事態収拾に乗り出すべきである。

 強硬一辺倒の姿勢では国際社会の理解は得られず、中国経済にも悪影響を及ぼすのは必至だ。

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