タイムス×クロス 木村草太の憲法の新手

[木村草太の憲法の新手](117)桜を見る会 功労なく招待すれば違憲 「知る権利」侵害も深刻

2019年12月1日 13:36

 内閣総理大臣主催の「桜を見る会」に注目が集まっている。政府によれば、この会は、「各界において功績、功労のあった方々」を招待・慰労するパーティーだ。1952年以来の伝統があり、他の政権下でも開催されてきた。

 ただ、現在の安倍政権下では招待客が増え、支出額も2014年に3005万円だったのが、19年には5519万円にまで右肩上がりで膨れ上がった。今年の通常国会でも、支出実績が予算を大きく上回る放漫財政や、招待基準の不透明さが批判されている。

 この点、今年10月、共産党の機関紙『赤旗』が、この会が安倍首相の後援会旅行に利用されていると指摘した。11月8日、田村智子議員が、参議院予算委員会で、参加者のブログ記事などを示して質問している。

 また、「桜を見る会」とは別に、安倍後援会主催の高級ホテルでの前夜祭についても、政治資金収支報告書への収支未記載や、会費と実際の経費との差額については買収、ホテルからの利益供与等の疑いが指摘されている。こちらは、安倍事務所が明細書を提示しないため、疑惑が晴れない状態が続いている。

 前夜祭も問題だが、憲法との関係では、「桜を見る会」本体に注目したい。

 この点、「桜を見る会」は、政府主催なのだから、首相らが、後援会関係者を優先して大量に招待しても、違法性はないのではないか、という解説も目につく。

 しかし、憲法14条1項は、平等原則を定めており、行政機関が、合理的理由なしに、国民を区別することを禁じている。各界の功績・功労者をねぎらう目的で、実際に功労ある者を招待していたのなら、合理的理由があると言えよう。しかし、「首相の後援会関係者」だからといって、「各界の功績・功労者」とは言えない。後援会関係者だというだけで招待したのが事実なら、憲法違反は明白だ。

 では、本当に功績・功労にかかわらず、後援会関係者であることだけを理由に招待したのだろうか。こうした、会の運営の合憲性や合法性・妥当性を判断するには、招待者リスト・招待基準の詳細・招待者を選ぶ手続きの議事録などの公開が必要だ。しかし、政府はこれらをほとんど公開せず、招待者リストは5月に破棄したという。招待者リストは、「個人情報」だというのがその理由だ。

 しかし、「桜を見る会」への招待は、政府が功績・功労を認め、参加者がそれを受け入れた証のはずだ。個人情報として公開を拒むのは不当だろう。憲法は、国民の知る権利を保障している。誰が、どのような功績・功労を評価されたのか、それを税金によってねぎらうことに正当性があるのか。国民にはそうした点について知る権利がある。政府の対応は、「知る権利の侵害」としても深刻だ。

 おかしなことが起こっていても、権力者に強弁されると、国民は、見てみぬふりをしがちになる。しかし、憲法は、平等原則や知る権利を保障している。国民は、自信をもって、「おかしいことはおかしい」と批判してよい。担当大臣は説明責任を果たすべきで、現段階で、「『桜を見る会』に違法性は何もない」と断言するのは、正しい法の理解ではない。

(首都大学東京教授、憲法学者)

 お知らせ 本コラムを収録した新刊「木村草太の憲法の新手 2」(沖縄タイムス社、1300円)が発売されました。初版の「木村草太の憲法の新手」(同、1200円)とともに県内書店で販売しています。

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