安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡る疑惑が広がるばかりである。

 だが真相解明は一向に進まない。原因は安倍首相が当事者であるにもかかわらず、説明責任を果たしていないからである。

 さらに真相解明に当たって深刻な影響を与えているのが招待者名簿を内閣府が大型シュレッダーにかけ、廃棄したことだ。

 今年の見る会は、4月13日に東京都内の新宿御苑で開催された。招待者名簿が裁断されたのは5月9日。1カ月もたっていない。しかも共産党議員が資料提出を要求した約1時間後の裁断である。

 とても偶然とは思えない。安倍首相にとってやましいことがあり、「証拠隠滅」を図ったのではないかとの疑念が消えないのである。

 各省庁は推薦者名簿について、おおむね3~10年の保存期間を設けている。それと比べ、保存期間を1年未満とし、招待者名簿を廃棄した内閣府の異様さが際立つ。

 招待者名簿の電子データの復元は通常なら可能である。菅義偉官房長官は記者会見で、技術的にも復元はできないと説明した上で「詳細は聞いていないが、事務方からできないと聞いている」と人ごとのような回答を繰り返し、説得力がない。不都合なことがなければ、復元するよう命じてしかるべきである。

 公文書の改ざんや隠蔽(いんぺい)が相次いだ森友、加計学園問題、陸上自衛隊の日報問題などで政府がないとしていた公文書が、再調査によって発見されたケースがあるからである。

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 安倍首相の答弁も一貫性がない。

 「招待者の取りまとめはしていない」と人選への関与を否定していたが、先月20日の参院本会議で招待者の推薦で自身の議員事務所に「意見を言うこともあった」と発言を修正した。参加者の人選過程への関与を認めたのである。

 見る会を巡ってはマルチ商法で多くの被害者を出して破綻した「ジャパンライフ」の元会長が2015年に招待を受け、受付票の写真を宣伝チラシに悪用していた。「60」という数字が記載され野党は首相の推薦枠だと追及している。内閣府の担当者は名簿を廃棄したため「数字の意図は分からない」と回答しているが、誰が信じるだろうか。

 反社会的勢力が参加し、菅官房長官とツーショット写真を撮っていたことも明らかになっている。

 招待者名簿が破棄されては事後検証ができない。やはり安倍首相が国会で説明するしかないのである。

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 共同通信社が先月下旬に実施した全国電話世論調査によると、安倍首相の発言の修正など、見る会を巡る安倍首相の発言を「信頼できない」と回答した人は69・2%に上った。国民にこれだけ疑念が持たれていることを重く受け止めなければならない。

 安倍首相は相次いだ閣僚辞任に関し「政治活動については一人一人の政治家が自ら襟を正し、説明責任を果たすべきだ」と答弁した。首相は国会に進んで出席し、その言葉を自らにも課すべきである。