2万2770人が出場した第35回NAHAマラソン。那覇の最高気温が26・1度と夏日を記録する中、ジョガーはアップダウンのあるコースに苦しみながらも、沿道の大声援を力に変えてゴールを目指した。「首里城再建まで走る」「いつか孫たちと走りたい」-。それぞれの思いを胸に、感動のドラマを紡いだ。
◆同僚と偶然の再開
前半13・5キロ付近の東風平北交差点。ジョガーたちは足取り軽く走り抜けた。堀口剛志さん(58)=東京都=は、沿道で応援していた沖縄勤務時代の同僚と数年ぶりに偶然の再会。「久しぶり」と笑顔で握手を交わし、ドリンクを受け取って完走を約束した。
第1関門となる糸満市摩文仁の平和祈念公園(21・3キロ地点)。制限時間の午後0時15分にスタッフの高校生が「人間の鎖」で封鎖する中、ジョガーが次々に押し寄せた。直前に通過した初参加の佐藤浩子さん(56)=盛岡市=は「ここが目標だった。今日はリタイアするが、来年は完走したい」と汗を拭った。
◆サプライズの応援
後半に入った29・5キロ地点の糸満市真栄里の給水地点では、足を引きずり、立ち止まって動けなくなる人も。石垣市の知念昌平さん(33)は「ここまで来たら気力。沿道の差し入れを力に最後まで頑張る」と気合を入れた。
ゴールまで残り2キロのモノレール小禄駅。那覇市出身の堀川剛さん(40)=東京都=は沿道の「ごうちゃん!」と叫ぶ聞き慣れた声に驚いた。声の主は銀座にある行きつけの沖縄料理店「いいあんべぇ」のママや客ら。
サプライズで早朝の便で駆け付けた。ひっくり返りそうな堀川さんを見て、ママの大城友香さん(47)は「どぅまんぎて(驚いて)たね」とニヤリ。手を振って答えた堀川さんは最後の力走を見せた。
◆自分で自分をほめたい
最終関門の奥武山陸上競技場ゲート前では制限時間の午後3時15分、「人間の鎖」に阻まれ、涙をのむ人も。その場で座り込んだ座間味小教諭の玉城菜緒さん(29)は「まさかここで引っ掛かるなんて。子どもたちにメダルを持って帰ると約束したのに…」と涙目だった。
最後にゴールゲートをくぐったのは東京都出身で那覇市在住の中谷星知さん(23)。下半身に力が入らず、「マジやばい」と両膝をついた。練習量が少ない中で完走できたことに「自分で自分を褒めてあげたい」。NAHAマラソンは海やエイサーが見られ、「沖縄の自然と文化を体感できる大会。来年もまた出ます」と満面の笑みを浮かべた。