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人工知能で高速解析 岡﨑威生氏(琉球大学工学部教授)

2019年12月4日 15:47
 山形大は、世界遺産「ナスカの地上絵」で知られる南米ペルーのナスカ台地とその周辺で、人間や動物の地上絵143点を新たに発見したと発表した。うち1点は日本IBMと共同で、航空写真を人工知能(AI)で解析して見つけた。両者はAIを用いた発見は世界初としている。(11月16日付)


結果基に人が最終判断

 新たなナスカの地上絵が、人工知能(AI)の活用で発見された。同じような取り組みとして、エジプトやマヤなどでの遺跡発見に人工衛星が利用されてきたが、人工知能による画像認識技術利用は新しいステージに進んだといえる。

 山形大学坂井教授研究グループの発表では、高解像度の空撮写真に人工知能技術を適用して地上絵候補地を抽出し、現地調査で同定したとのことである。候補地抽出は研究者自身によっても可能だが、膨大なデータに対して時間がかかりすぎるため、IBMワトソン研究所のディープ・ラーニングシステムを活用し、高速に処理された。候補地全てが正解だったわけではなく、今後データ量を増やすことで精度向上が期待できる。

 IBMのディープ・ラーニングが一般に知られるようになったのは、2016年に東京大学宮野教授研究グループが特殊な白血病の診断に成功した時である。抗がん剤治療による病状改善がみられなかった患者のゲノム情報を、2千万件以上の研究論文や1500万件以上の薬品特許情報から学習した結果と照らして治療法を提案し、臨床医が最終判断して救われた。現実的ではないが、臨床医が膨大な事例を検証することで同じ判断ができたかもしれない。しかし10分で実行することに、圧倒的な価値がある。

 二つの事例に共通するのは、人間でもできるかもしれない照会をディープ・ラーニングにより高速実行し、得られた結果を人間が最終判断している点である。人工知能は人間の代わりに判断するという印象が強いが、人間が最終判断するのは研究や臨床分野の特徴といえる。逆に最終判断を人工知能に任せようとする典型は、自動運転である。高齢者など人間の判断が十分発揮できない場合への支援となる。

 支援が進みすぎると、人間の判断能力が退化してしまうのではないか。そんなことを考えているとき、タイムスビルで新聞スクラップコンテストの展示に出合った。小学生から高校生までが、日々の新聞報道の中から関心事を抜き出し蓄積している。そこから自分の考えを整理し、知恵となっている。データ収集とそこに含まれる知識獲得を人工知能がやってしまうのであれば、スクラップの意味は何だろうか。

 人間が成長していく過程で獲得する判断能力は、必ずしも人類共通のものではなく、個性に富んでいる。人工知能が共通部分を代行してくれることは有益だが、個性を喪失させることではないはずだ。スクラップに限らず、個性のトレーニングに精進し、人間であり続けたい。

★新企画「ニュースナビプラス」とは? 百貨店やコンビニなどを抱える小売業大手の会長、人工知能(AI)を研究する大学教授、スイーツ開発・販売業社長、旅行会社のシンクタンク社長、仕出し店とIT企業を経営する若手社長の5氏が、それぞれの専門的な知見を基に、国内外の気になるニュースを読み解きます。

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