「刑務官が受刑者の足のつめを切り、紙おむつを交換している姿に、身内以上の温かさを感じた」。沖縄刑務所で過ごしていた受刑者の手紙の一文だ

▼10年前、介護施設化する刑務所の現状を連載した。歩行困難な高齢受刑者に対し、親子ほど年が離れた刑務官が付き添う姿を見て、胸が締め付けられた

▼沖縄刑務所に聞くと、受刑者の高齢化は当時より進んでいる。2019年10月末現在、受刑者の総員は276人で最高齢は82歳。調査対象266人のうち60歳以上は80人で約30%を占め、その割合は10年前の2倍だ。心身に疾患のある高齢受刑者も多い

▼社会的孤立や認知機能低下などから万引で摘発される高齢者も年々増加。居場所を見つけられずに再び罪を犯す高齢者の存在が、結果的に刑務所内の高齢者の割合を押し上げる

▼刑罰や社会的制裁だけでなく、福祉の網から漏れて罪を犯す人たちを社会でどう支えるか。厚生労働省は来年度から出所者らを福祉につなぐ地域生活定着支援センターと、福祉施設や保護観察所など関係機関の連携協議会を全国に設ける方針だ

▼ある刑務官は、刑務所はセーフティーネットではないとしつつも「出所者に『二度と戻ってくるな』と送り出せば、死まで追い詰めることもある」と話す。刑務所がついのすみかになるのは、あまりにも悲しく寂しい。(吉川毅)