沖縄県の久米島町で1948年創業の「米島(よねしま)酒造」は、地元で蛍が育つ白瀬走川の水を使い、親子4代にわたって泡盛の手造りを続ける。創業70周年の今年6月、銘酒「久米島」35度が大阪で開かれた20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)の提供泡盛7種の一つに選ばれた。4代目社長の田場俊之さん(39)は浮かれず、「小さな島の小さな蔵。地道に味を磨きたい」と話す。(社会部・堀川幸太郎)

泡盛になる米に蒸気で熱を加える「米蒸し」で、蒸気の量や温度を管理する米島酒造の4代目社長・田場俊之さん。「味の7割が決まる工程」といい、秒単位のコントロールだ=1日、久米島町の同酒造

 久米島の度数3種の中でも35度は、30度の舌を包むような優しい香りと、43度のどっしりと落ち着いた辛みを併せ持つ絶妙な味わいだ。

 俊之さんはサミット出品話に驚いた。小規模な生産量の中でも、酒質を整えるのが難しい久米島35度は「年間500本あるかどうか」という島限定の直売品で、「どこで味見をしたのか分からない」という。

 米島酒造の歴史は、いい時ばかりではない。全盛期を迎えていた1967年。初代の故・良徳さんと2代の故・庄次郎さんが体を壊した家族を見舞うため蔵を離れた。その間に全く違う味が造られ、評判が地に落ちた。3代・弘さん(66)も一緒に立て直した。

 2000年に酒造りに加わった俊之さんは、辛酸をなめた祖父から「何があっても造る間は蔵を離れてはならない」と薫陶を受けた。06年、76歳で亡くなった場に立ち会えなかった。

 が、「死に目に会えなかったからこそ、今もじいさんと一緒に造っている気がする」。丹念な泡盛造りの心の支えだ。

 本来、島での直売に限る「久米島」35度は6~8日、那覇市久茂地のタイムスビルで開かれる「久米島町 観光・物産と芸能フェア」で特別販売する。720ミリリットル税込み5千円。