音楽に疎い私は映画の中で偉大な音楽家と初見を果たす。それがオペラとあっては疎いも越えた次元にあるが、初めて聞くアンドレア・ボチェッリの歌声は包み込む優しさに満ちていた。

「アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール」

 幼いアモスは生まれながらに弱視。その微かな光さえも12歳の頃に失われる。見えない世界でアモスは自分の将来を憂える事しかできないでいたが、彼の歌声に魅了された叔父はアモスを歌える場所に誘いだすのだった。

 だが変声期で美しい声は失われ、落胆するアモス。彼を救ったのは数々の有名オペラ歌手を育てたマエストロとの出会いだった。

 歌声に酔いしれながら思い出すのは、苦しい時にそっと背中に添えられた温かな手。忘れていたぬくもりが確かに自分にもあったと、誰もが幸せの記憶を呼び戻す。(スターシアターズ・榮慶子)

◇プラザハウスで上映中