動植物の生命の設計図であるゲノム・遺伝情報を人が操作するゲノム編集が、近年幅広い分野で注目を集めている。狙った遺伝子の一部を書き換える技術だが、一方で懸念もある

▼厚生労働省の専門委員会は、ヒトの受精卵に用いて子どもを誕生させることについて法的規制が必要との報告で大筋一致した。中国の研究者が昨年、ゲノム編集を行ったヒトの受精卵から双子を誕生させたと発表し、世界に衝撃を与えたことは記憶に新しい

▼生殖細胞を改変すると、何世代にもわたり影響が出る恐れがある。さらにこの手法を安易に認めると、親の好みで容姿や能力が決定できる「デザイナーベビー」の誕生も理論上可能になるという

▼これまでも日本哲学会など人文系3学会が「優生学的な改変につながる」との強い懸念を表明。日本遺伝子細胞治療学会など医療4学会も臨床応用の禁止を求める声明を発表していた。慎重を期す専門委員会の考えは当然だろう

▼ゲノム編集は2012年に簡便な方法が開発され、農業や食品などさまざま分野で利用が活発化。医療分野ではがん細胞の増殖の抑制に効果を上げた例などが報告されている

▼科学技術の進歩で人類が獲得した新たな領域にどう対応するか。議論を重ね、技術が暴走することがないよう新たな知恵やルール作りが求められる。(内間健)