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ナイフを向けて「刺していいか?」 ひきこもり16年の息子 “絶望”映す母の日記

2020年1月12日 05:43

【「独り」をつないで ひきこもりの像】 孤絶(上)

ヨシエさんが息子との日々を欠かさずつづる日記。「ナイフ」「死」の単語が頻繁に登場する(画面の一部を加工しています)

上京先で息子が住んでいたアパートの風呂場。ヨシエさんが写真に収めた=2013年、都内(提供)

ヨシエさんが息子との日々を欠かさずつづる日記。「ナイフ」「死」の単語が頻繁に登場する(画面の一部を加工しています)
上京先で息子が住んでいたアパートの風呂場。ヨシエさんが写真に収めた=2013年、都内(提供)

 〈ナイフを私に向けて刺していいか?と言う〉

 〈首を絞めて 殺して! ナイフをあてて 血が出るまで切りたいと言う〉

 優しく穏やかな性格で、これほど手のかからぬ子はいないと思っていた息子(34)が、高校卒業直後にひきこもるようになって今年で16年目。母ヨシエさん(69)=仮名=の日記は息子に関する記述でびっしり埋まる。

 自宅は沖縄本島北部で、病気がちの夫(71)が1人で住む。母子2人は約6年前から、自宅と別に月3万7千円の賃貸アパートで暮らす。

 部屋は、今年5月に壊れたクーラーがそのままになっている。母以外との接触を嫌がる息子が修理業者の訪問を拒み、夏中うだるような暑さを窓も開けずに過ごした。ヨシエさんは寝間着の内側に食品用の保冷剤を入れて眠る日々が続いた。

 息子はひきこもった当初から自殺願望を口にした。ヨシエさんにナイフの先を向けるようになったのはここ最近のこと。以来、室内の刃物はほとんど隠した。それでも「ほんの少しでも対応を間違えば、大変なことが起きる気がする」。社会とのつながりを絶ち、腰まで髪が伸びたわが子の姿に向き合うたび緊張が走る。

 ヨシエさんは毎日、夫がいる自宅の家事を日中に済ませ、午後10時ごろ自宅から約1時間ほど離れたアパートに戻って息子に夕食を出し、午前1時を過ぎてようやく眠りにつく。しかし、6畳1間の同じ室内にいる息子は昼夜逆転の生活。すぐ隣で響くゲームやアニメの音に熟睡できない。明け方、台所の引き出しに唯一しまってある果物ナイフを握る息子に起こされることも週に何度かある。

 「これからどうしたいの?」「死にたい」

 「もし母さんがいなくなったら、どうするの?」「死ぬ」

 息子との会話は、そんなやりとりの繰り返しだ。

 「私だって絶望の中にいる。でも、息子の前ではそうでない振りをしてこらえて、頑張るしかないと思っている。命続くまで」

 閑静な住宅地の一角にある築30年以上のワンルーム。今にも崩れ落ちそうな親子の日々を、誰も知らない。 

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