警察庁が、あおり運転を厳罰化する方針を固めた。道交法の条文を改正してあおり運転を定義し、新たな罰則を創設する。来年3月中に閣議決定し、通常国会に関連法案を提出する考えだ。

 あおり運転は相手の運転者を威嚇する目的で、異常接近や蛇行運転、急な車線変更、クラクションやハイビームなどの挑発などが含まれる。

 だが道交法にはその定義がない。

 このため警察はあおり運転を車間距離保持義務や急ブレーキ禁止違反などで摘発。悪質な死亡事故には自動車運転処罰法の危険運転致死罪や刑法の殺人罪を適用してきた。

 警察庁は「通行の妨害目的で一定の違反により交通の危険を生じさせる恐れのある行為」をあおり運転と定義する方針だ。「一定の違反」には、現在適用している車間距離保持義務や進路変更の禁止などが含まれる見通しだ。高速道路上で他車を停止させるなど著しい危険を生じさせたケースも盛り込む。

 違反1回で違反点数を15点以上とし、即運転免許取り消しの対象とする。再取得までの欠格期間は1年以上、罰則は刑法の暴行罪の「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」や強要罪の「3年以下の懲役」を軸に検討する。

 あおり運転に適用される既存の違反に比べれば大幅な厳罰化である。

 偶発的に前車に接近するなどした一般ドライバーまで摘発の対象としないよう、通行の妨害目的は意図を持って執拗(しつよう)に違反行為を繰り返したケースに限定するという。そのためにはあおり運転の定義を明確にしなければならない。

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 2017年6月に神奈川県の東名高速道路で、無理やり停止させられた車の夫婦が後続の大型トラックに追突され、夫婦が死亡、娘2人も負傷する事故を契機に、あおり運転が社会問題化した。

 控訴審判決で東京高裁は審理手続きに違法な点があるとして、懲役18年とした一審判決を破棄し審理を横浜地裁に差し戻した。だが、停車行為は一審と同様に危険運転に当たらないとしながらも、妨害運転と死亡事故の因果関係を認定した一審判断に誤りはないとした。

 自動車運転処罰法は運転行為を問題にし、停車後の判断は拡大解釈との見方があるのも事実だ。法務省が同法に割り込みによる停車行為が危険運転に当たるとの明文化に向けて調整をしているのはこのためだとみられる。

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 警察庁が今年10月、あおり運転に関して全国の運転免許試験場でドライバー2681人にアンケートした。過去1年間にあおり被害を受けた経験がある人は939人(約35%)に上った。3人に1人が経験しており、あおり運転が高い割合で横行している実態が明らかになった。

 道交法改正は悪質なドライバーが死傷事故を起こす前に厳正に処罰してあおり運転を抑えるのが目的だが、厳罰化だけでは根絶はできないだろう。同時に重大事故につながるあおり運転を防止する啓発活動を展開し、社会全体で意識を高めていく必要がある。