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あれはサインだった 明かされる引きこもりの理由 69歳の母「私が悪いと思うから…」

2020年1月14日 06:05

【「独り」をつないで ひきこもりの像】 孤絶 (下)

「ひきこもりについて一緒に考える社会になってほしいから取材を受けた」と話すヨシエさん=9月(画像の一部を修正しています)

 もっと早く、ひきこもるサインに気付けていたら−。そんな問い掛けを自身に何度したか。ヨシエさん(69)=仮名=は、思い当たる前兆を探し出しては自分を責める日々を重ねる。

 息子(34)は最近、高校卒業直後に自宅から出なくなった理由を「友達に無視されたから」と口にした。

 それまで子育てに大きな悩みはなかった。気になることといえば人にはっきり意見を言うのが苦手なくらい。ゲーム仲間も数人いた。

 ただ、進路の話題が出始める高校3年の夏休み明けに突然、「バスに乗れなくて帰れない」「死にたい」と電話をよこした。迎えに行った校門前。息子の表情は覚えていないが、雨の降る中、傘も差さず待つ姿に強い違和感を覚えた記憶はある。ヨシエさんは高校側に異変を訴えたが「思春期にはよくあること」と返された。

 その翌年2月、周囲が進学や就職を決める時期に息子はふさぎ込むようになった。親子の会話が日に日に少なくなっていく家の中で「進路はどうするの」とも聞けずじまい。息子は卒業式に出席したものの、その後から家を出なくなった。

 今、退職し70歳を目前にしたヨシエさんは経済的、体力的に息子を支えることに「限界を感じている」と目を伏せる。全国ニュースで親がひきこもる子どもを手にかけた事件が報じられた。「変化に気付けなかった私が悪いと思うから、どれだけ追い詰められても私が息子の命を奪うことは絶対にしない」

 「内職なら僕にだってできるかも」「スーパーに商品を並べる仕事なら」。息子が時々つぶやく一言に希望を見いだす。

 それでも、母以外との関わりを過度に怖がって家から出なかったり、玄関の鍵を閉めたか幾度も確認したりする様子に、支援者など他者とつながる糸口をどう見つければいいか道筋は描けない。

 ひきこもりの人を強引に連れ出す民間団体の「引き出し屋」に頼むことも考えた。精神科への再入院も浮かんだ。「だけど」とヨシエさんは言葉を継ぐ。

 「失敗したり退院したりして、心に再び傷を負って家に戻った息子の反動を思うと、怖くて動けない。その後も、私たち親子の生活はずっと、ずっと続いていくから」

 孤立した母子の16年。息子はやがて、人生の半分をひきこもることになる。(「家族のカタチ」取材班・篠原知恵)

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