導入ありきで、受験者置き去りのままに混乱を招いた文部科学省の大失態だ。採点ミスの懸念や自己採点の精度の問題に抜本的解決策を示せず、大学入試改革は破綻した。試験実施の約1年前に制度が覆る異常事態である。

 2020年度開始の大学入学共通テストを巡り、萩生田光一文部科学相は17日の閣議後記者会見で、国語と数学への記述式問題導入を見送ると発表した。「受験生の不安を払拭(ふっしょく)し、安心して受験できる体制を早急に整えることは困難だと判断した」と述べた。

 記述式問題の狙いは「自らの力で考えをまとめたり、相手が理解できるよう根拠に基づいて論述したりする思考力・判断力・表現力」を評価することだった。マークシート式の大学入試センター試験からの変革を示す象徴だった。

 50万人を超える受験者の答案を約20日間で、学生アルバイトを含む約8千~1万人で採点する計画に疑問の声が相次いだ。

 昨年11月の試行調査の国語では、採点ミスが国語で0・3%、数学で0・01%あった。国語のミスを50万人に換算すると1500人に相当する数字だ。出願先を決める際に欠かせない自己採点でも実際の成績のずれは国語で最大33・4%、数学で同14・7%に達した。

 萩生田氏自身、採点ミスをゼロにするのは不可能と認めている。そんなずさんなやり方に受験生や教育関係者が不安を抱えるのは当然だ。

 共通テストでは、英語民間検定試験の導入も見送られている。二つの目玉が消え、大学入試改革の意義そのものが問われている。

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 記述式問題の欠陥は早くから専門家から指摘されていた。公平公正な採点を訴え文科省に見送りを要請した受験生や現場の声に真摯(しんし)に向き合っていれば、もっと早期の収拾が図られていただろう。

 記述式には、これまでの入試制度を反省し、「知識偏重の1点刻みの試験からの脱却」の理念が掲げられていた。だが、正確で公平な採点が担保できなければ、入試制度自体が成り立たない。

 大規模な試験では記述式試験は不可能ということが明らかになった。萩生田氏も今後の導入は「まっさらな状態から対応したい」としている。

 共通テストはマークシート試験で行い、大学の個別試験で記述式や小論文などを採用し、受験生の思考力や判断力などを測るべきであろう。

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 英語の民間検定試験導入の見送りから約1カ月半。相次ぐ変更に、最初に共通テストを受ける現在の高校2年生らからは「振り回された」と憤りの声が上がった。

 経済や地域の格差が問題視された民間検定試験については、萩生田氏の「身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」の発言で批判が高まり、導入が見送られた。記述式問題も「決断したのは私で、私に責任がある」と述べている。

 同じ間違いを繰り返さぬよう見送りに至った経緯や原因を検証し、受験生を翻弄(ほんろう)した責任の所在を明らかにした上で、大学入試制度を根本から見直す必要がある。