2020年度の与党税制改正大綱に、「未婚のひとり親」支援が盛り込まれた。長い道のりだったが、婚姻歴にかかわらず、ひとり親の暮らしを平等に支える制度がやっと動きだす。

 税制改正の目玉ともいえる未婚のひとり親支援は、配偶者と死別、もしくは離婚したひとり親が対象の「寡婦(寡夫)控除」に未婚者を加える改革である。年間所得が500万円(収入は678万円)以下であれば、最大35万円が税額計算時の所得から差し引かれ、所得税や住民税が軽くなる。

 寡婦控除は、戦争で夫を失った妻の生活を支えるために1951年に創設された制度である。その後、寡夫へと適用を広げたものの、さまざまな事情から結婚せず子どもを育てるひとり親は対象としてこなかった。

 法律上の結婚をしたかどうかで線引きをする制度の根底にあるのは、伝統的な家族観だ。 

 時代の変化や家族の多様化とともに、未婚の親に適用されないのは不当な差別だとの声が強まっている。日本弁護士連合会は2014年、非婚の親に対し寡婦控除を適用するよう意見書をまとめた。

 さらにここ何年かは、公明党が制度改革を強く要求、対象拡大に慎重な自民党との間で協議が続けられてきた。

 今回、難航していた議論が大きく動いたのは、自民党の女性議員らを中心に公明党案を支持する声が上がったからだという。「子どもの貧困対策」との視点も適用を後押しした。

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 16年の厚労省調査によると、母子世帯に占める「未婚の母」の割合は8・7%で約10万世帯に上る。「死別」の8・0%を上回り、増加傾向にある。

 自民保守派には寡婦控除の適用拡大で「伝統的家族が崩れる」との警戒感もあるようだが、そもそも家族のあり方が変わってきている。

 指摘されるのは、所得に基づいて算出される税やサービス利用料が、寡婦控除のあるなしで変わる不利益だ。来春から始まる高等教育の無償化を巡って、給付格差を心配する声があったのはそのためである。

 未婚の母の平均年収は約177万円で、母子世帯全体の約200万円より低い。ひとり親家庭の中でも未婚者が厳しい状況に置かれていることと、寡婦控除の問題は無関係ではない。

 新しい制度が生活の底上げや教育格差是正につながるのか、見届けたい。 

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 保育料や公営住宅の家賃などへの寡婦控除の「みなし適用」は、市町村が先行する形で取り組んできた。

 税調が根本的課題に対応し、税制に風穴をあけたことは評価されるが、時間がかかりすぎたことは否めない。

 日本社会はこれまで未婚のひとり親に対しペナルティーをかけ続けてきた、と語ったシングルマザーの言葉が胸に刺さっている。

 寡婦控除の適用が経済的側面だけでなく、さまざまな生きづらさを解消する契機となることを期待したい。