社説

社説 [総務次官更迭] モラル崩壊 浮き彫りに

2019年12月22日 09:26

 現職の事務次官から元事務次官への前代未聞の情報漏えいだ。かんぽ不正に端を発した日本郵政グループの不祥事は、顧客の信頼を裏切っただけでなく、行政の信用をも失墜させる底知れない広がりを見せている。

 高市早苗総務相は、かんぽ生命保険と日本郵便の保険不正販売問題を巡って、事務方トップの鈴木茂樹総務事務次官を事実上更迭した。

 鈴木次官が、行政処分案の検討状況を郵政グループに漏らしていたことが判明したためである。情報を伝えた相手は総務次官経験者の鈴木康雄日本郵政上級副社長だ。

 大臣室でのごく少数の幹部による協議内容が漏れているとの情報があり、内部監察の結果、鈴木次官が鈴木副社長に電話で伝えていたことを認めたという。

 日本国憲法において「全体の奉仕者」とされる公務員には、公平・公正さが求められている。守秘義務を持つ公務員の情報漏えいは決して許されない。しかも監督権限を持つ側が監督される会社に情報を漏らすというのは道理にもとる。

 旧郵政省出身の先輩後輩がなれ合い、利害関係にある総務省と郵政グループがもたれ合う構図は、情報漏えいの常態化さえ疑われる事態だ。判断に手心を加えたことはなかったのか。

 高市氏は、監督官庁の出身者が日本郵政の幹部に就任していたことが問題だったとの認識を示したが、議論を待つまでもない。

 国民の疑念が膨らむ天下り人事の抜本的見直しが必要だ。

■    ■

 情報を受け取った鈴木副社長は、保険の不正販売問題を追及したNHK番組への抗議を主導した人物でもある。

 その際「かつて放送行政に携わり、協会(NHK)のガバナンス強化を目的とする放送法改正案の責任者だった」と自身の経歴を誇示したことがあった。

 経営陣に天下りで幹部を送り込む手法は旧郵政公社時代から続くが、総務省OBの経歴や官庁の威光を振りかざす態度と、今回の問題は無関係ではないだろう。

 これまでも官僚の天下りは省庁と企業の癒着を生み、不正の温床となってきた。誰が漏えいを持ち掛け、その情報はどのように扱われたのか、徹底解明が求められる。

 弊害の多い関連企業への天下りを長年にわたって容認してきた政治の責任も問われている。

■    ■

 保険不正販売を巡っては、不正が疑われる契約が1万2836件に上ったことが分かったばかりである。

 高齢者を狙い撃ちしたやり方は悪質と言わざるを得ない。一方で不正の背景に郵便局員に課せられた過酷なノルマがあったことも事実だ。

 日本郵政の長門正貢社長は経営責任について「しかるべきタイミングで発表したい」と話している。

 ガバナンス(企業統治)の崩壊と、コンプライアンス(法令順守)の欠如があらわになった以上、幹部が総退陣し一から出直す以外に再生の道はない。

 
前の記事へ 次の記事へ
沖縄関連、今話題です(外部サイト)
JavaScriptをOnにしてください
きょうのお天気