社説

社説[照明弾訓練 再開通告]住民無視は容認できぬ

2019年12月23日 07:30

 米軍キャンプ・ハンセン演習場に隣接する金武町伊芸区に60ミリ迫撃砲照明弾が3発落下した事故で、米軍は事故原因を「強風によって基地外に落下した」と結論付けた。再発防止策を実施し、訓練を再開する意向という。

 住民の安全に対する懸念を無視した軍事優先の振る舞いというほかなく、とうてい納得できない。

 沖縄防衛局が米軍からの情報を県に伝えた。日米地位協定に阻まれ日本側は事故調査をしていない。米軍の一方的な結論である。事故原因が米軍の言う通りかどうか検証ができないにもかかわらず、防衛局は米軍にただすことをしているようにはみえない。

 訓練再開の意向にも異を唱えない。事故が起きれば、被害を受けるのは住民である。当事者意識を欠き、従属的な姿勢はふがいないばかりだ。

 照明弾落下を住民が確認したのが今月5日の午後4時前だ。照明弾は夜間に使用するのが原則のはずで、なぜこの時間帯に照明弾を打ち上げたのか。どんな訓練をしていたのか。説明がない。

 照明弾は伊芸区から約2キロ離れた「レンジ2」から発射されたという。当時、金武町には強風注意報が発令され、風速約9メートルの風が吹いていた。レンジ2の射撃方向は西海岸側とされる。照明弾は風にあおられ、逆方向に流されてきたことになり、訓練のずさんさが浮き彫りになる。

 米軍は再発防止策として(1)同種の照明弾の訓練を実施できる最大風速を下方修正(2)風の状況をより正確に測定するための機器の改良-の2点を示した。防止策とは名ばかりで具体性はまったくない。

■    ■

 最大風速を下方修正するといっても、現行規則では最大何メートルで、下方修正すれば最大何メートルになるのかがわからない。適切な修正かどうか判断できないのである。機器の改良についても、これまで正確に測定できないものを使っていたと認めるのに等しい。

 訓練再開を最優先し、住民を愚弄(ぐろう)するものだ。

 伊芸区の被害は照明弾だけではない。連日明け方から夜半まで実弾射撃訓練で安眠を妨害されている。同区は事故発生直後に行政委員会を開き、照明弾の落下に抗議し民間地に近いレンジでの実弾射撃訓練の即時中止を求める決議を全会一致で採択した。

 伊芸区では小銃弾に被弾して住民が負傷するなど多くの事件・事故が起きており、怒りは沸点に達しているのだ。

 そもそも民間地と隣接する演習場で実弾射撃訓練をすること自体が無謀なのである。

■    ■

 ドイツでは野外演習区域や射撃場の使用もドイツ側の許可が必要となる。イタリアでも米軍の訓練はイタリア軍司令官へ事前通告し、承認などを得なければならない。両国とも自国の法律や規則を米軍に適用して主権を確立しているのである。

 政府は米軍の訓練に口を挟むことをしないが、これを改めない限り、住民の生命と財産は危険にさらされる。政府は伊芸区の切実な訴えを受け止め、米軍に対し最低限民間地近くでの照明弾や実弾射撃訓練の廃止を求めるべきだ。

 

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