安倍晋三首相と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が中国の四川省成都で会談した。日韓首脳の正式会談は約1年3カ月ぶり。元徴用工訴訟問題をはじめとする懸案の解決に向けて外交当局間の対話を継続する方針で一致したことは評価できる。

 会談で両氏は共に、日韓は重要な隣国同士であるとの認識を示した。最大の懸案である元徴用工問題で抜本的な解決策は示されなかったものの、対韓輸出規制や日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄通告など、この間の冷え切った関係をみれば、首脳会談の実現こそが成果の一つと言える。

 両国の関係悪化のきっかけとなった元徴用工問題は、徴用工だった韓国人4人が起こした戦後補償訴訟だ。韓国最高裁は、徴用の背景にあった日本の植民地支配を「不法」、企業が徴用工を働かせた行為を「反人道的な不法行為」とみなし、政府間で「解決済み」であっても個人請求権は消滅していないとして日本企業に賠償を命じた。

 原告団は判決に基づいて差し押さえた日本企業の資産を売却する手続きを進めている。実行されれば両国の関係に再び深い亀裂を生じさせることは確実で、文氏は解決に向けた具体策を提示してほしい。

 一方の安倍首相は会談で、韓国の責任により解決を図るよう求めたが、判決趣旨を見れば日本側の対応も重要な鍵を握っている。「解決済み」との言葉を繰り返すだけで、かつて人権を踏みにじられた人々の傷が癒えるとは思えない。日本側も当事者として韓国当局と協力し、解決の道を探るべきである。

■    ■

 同問題への日本側の報復とみられている対韓輸出規制は、韓国だけでなく日本経済にもダメージを与えた。各地の観光地からは韓国人観光客の姿が消え、自動車など日本製品の韓国での売れ行きも悪化している。

 会談で安倍首相は、安全保障上の観点から規制を強化したとの従来の立場を説明したが、規制後の韓国によるGSOMIA破棄通告などを見れば、両国が態度を硬化させるほど互いの安全保障が脅かされることは明らかだ。

 元徴用工問題、輸出規制問題とも会談では互いの主張を述べ合うにとどまった。両国の関係修復は道半ばで、会談がその第一歩となるかどうかは、今後、それぞれの問題に対して両首脳がどれだけ歩み寄れるかにかかっている。

■    ■

 日韓首脳会談が中国で行われたことも意義深い。安倍首相は会談後の会見で習近平国家主席の国賓来日に触れ、日中が世界の平和、安定、繁栄に責任を果たすとの意志を明確に内外に示す機会にしたいとした。

 挑発行為を繰り返す北朝鮮への対応はもちろん、在韓、在日米軍の駐留経費増額を迫るなど、強大な軍事力を背景に圧力を強める米国への対処でも、日中韓の協調姿勢は重要な意味を持つ。

 隣国同士がいがみ合えば他国がつけいる隙をつくる。対話を継続する不断の努力こそが求められる。