社説

社説[自衛隊中東派遣]「国会抜き」は許されぬ

2019年12月28日 10:07

 政府は27日、海上自衛隊の中東派遣を閣議決定した。

 護衛艦1隻を新たに派遣し、アフリカ・ソマリア沖で海賊対処活動に当たっているP3C哨戒機を活用するという。日本独自の派遣で期間は1年とし、延長の際は再び閣議決定するという。

 派遣の法的根拠は防衛省設置法の「調査・研究」である。防衛相の命令だけで実施でき、国会の事前承認を必要としない。

 所掌事務などを定めた法律を海外派遣に適用するのは拡大解釈というほかない。地理的な範囲の限定もなく適用が無制限に広がる懸念がある。

 閣議決定時と活動終了時の国会報告を義務付けたが、事後報告では歯止めになることはないだろう。

 自衛隊の活動中に不測の事態が生じた場合は、武器を使用できる海上警備行動を発令するとしているが、保護できるのは日本船籍だけである。日本人が乗船する外国船籍などについてどう対処するかは不明確だ。

 こんな状態で軍事衝突に発展した場合に自衛隊員の安全は保障できるのか。

 そもそも今年6月に日本の海運会社のタンカーなど2隻がイラン沖のホルムズ海峡付近で何者かに攻撃されて以来、日本船舶への被害は出ていない。

 菅義偉官房長官が記者会見で「日本関係船舶の防護の実施を直ちに要する状況にはない」と認めた通りである。

 そんな中で自衛隊を派遣する緊急性も必要性もないのは明らかではないか。

■    ■

 トランプ米大統領が2018年5月にイラン核合意から一方的に脱退。イランへの制裁を全面復活させたことに対し、イランが猛反発したのが両国の対立の発端である。

 「自国の船舶は自国で守るべきだ」と要求するトランプ大統領はホルムズ海峡などの安全確保を目指す「有志連合」を11月に発足させた。

 安倍晋三首相は友好国イランを刺激するのを避けるため、有志連合への参加を見送る一方で、ロウハニ大統領と会談し理解を求めた。

 自衛隊の活動海域をオマーン湾やアラビア海北部、バベルマンデブ海峡東側の公海に限定。イランと接するホルムズ海峡やペルシャ湾を対象にしないのはこのためだ。

 米国の要求を受け入れると同時にイランとの対立を避けた形である。だが米軍とは情報共有する方針であり、イランから有志連合側と受け止められる恐れがある。

■   ■

 国会で十分な審議もなく、国会閉幕後に海外派遣を閣議決定するやり方は看過できない。なぜ、この時期に自衛隊を中東に派遣しなければならないのか、安倍首相が記者会見して国民に説明してしかるべきだが、それもない。

 閣議決定では「わが国は米国と同盟関係にあり、イランと長年良好な関係を維持する」と捉え、「これを生かし、中東の緊張緩和と情勢安定化に向け外交努力を行う」と明記している。

 日本がなすべきことは自衛隊派遣ではなく、米国とイランの対立を解くための橋渡し役にこそ徹するべきである。

 
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