沖縄タイムス+プラス ニュース

首里城火災に沖縄予算の減額、改善続いた雇用情勢… 沖縄県政の1年を振り返る

2019年12月31日 13:48

 10月31日未明に発生した首里城火災の直後から、県は再建に向けた取り組みを進めている。沖縄関係予算では3千億円台を維持するものの、使途の自由度の高い一括交付金の減額に歯止めがかからない状況が続く。衆院3区補選、参院選といった大型選挙では、名護市辺野古の新基地建設に反対する「オール沖縄」側が2連勝した。

首里城の火災現場。正殿(中央)は焼け落ちている=10月31日午前7時すぎ、那覇市首里当蔵町(小型無人機で撮影)

初当選を果たし、バンザイ三唱で喜ぶ屋良朝博氏(前列右から3人目)と玉城デニー知事(同2人目)=4月21日

有効求人倍率と完全失業率の推移

首里城の火災現場。正殿(中央)は焼け落ちている=10月31日午前7時すぎ、那覇市首里当蔵町(小型無人機で撮影) 初当選を果たし、バンザイ三唱で喜ぶ屋良朝博氏(前列右から3人目)と玉城デニー知事(同2人目)=4月21日 有効求人倍率と完全失業率の推移

首里城火災   

沖縄のシンボル再建へ 県や国 取り組み進める

 「必ず復元します」。玉城デニー知事は、10月31日未明に発生した首里城火災当日の会見で、迷いなく宣言した。首里城は沖縄戦で焼失し、復元を願う人々の思いと努力により築き上げられた「戦後復興の象徴」であり、琉球文化が結集した県民の「アイデンティティーのよりどころ」だった。その重みが、再建への早期決断を後押しした。

 「沖縄のシンボル」の早期再建への願いは、自発的な支援活動となり、沸き上がった。県への寄付金や寄付申し込みの総額は、12月27日現在、8億4856万8695円に上る。

 首里城正殿などは国が整備し所有する。今年2月からは、県が管理を担っている。再建に向けては、主に国が建造物を、県はそれ以外と役割を分担。政府が火災発生直後から早々に国主導の再建を打ち出す一方で、県は「国と協議して対応する」との姿勢が目立った。

 政府は今月11日、再建へ向け、基本的な方針を発表。2019年度補正予算に首里城関連費13億円を、20年度当初予算には首里城再建費を含む都市公園事業費38億円を計上した。

 県が再建へ向けた基本的な考え方を発表したのは26日。県民の声を取り入れながら「首里城に象徴される琉球の歴史・文化の復興に取り組む」ための指針としている。

 再建への取り組みは重要だ。一方で、再発防止のためにも、国、県などには、設備や管理体制をしっかりと検証し、説明責任も果たしてほしい。(政経部・屋宜菜々子)


国政選挙         

「オール沖縄」連勝 衆院補選参院選

 4月の衆院3区補欠選挙では無所属(現国民民主)のフリージャーナリスト屋良朝博氏、7月の参院選では琉球大学名誉教授で憲法学者の高良鉄美氏といずれも「オール沖縄」勢力の支援候補が勝利した。昨年の知事選や那覇市長選などに続く勝利で、玉城デニー知事の県政運営に追い風となった。

 一方、自民は14年の知事選で故翁長雄志氏に敗北して以降、知事選と国政選挙の選挙区は「1勝12敗」と苦戦を強いられている。名護市辺野古の新基地建設反対の民意が根強い中、選挙では新基地の賛否が主要争点となり、大きな支持を得られていないのが現状だ。

 こうした中、自民は22年予定の知事選での県政奪還に向け、来年6月の県議選に焦点を絞る。現在、与党多数の県議会で議席を逆転すれば玉城県政を追い込めるとの狙いだ。近年の課題である経済界と保守政界の連携強化を狙い、仲井真弘多元知事(80)を自民党県連の最高顧問に据え、態勢強化を図っている。

 これに対し「オール沖縄」勢力側は、次期衆院選の候補者人選で課題を抱える。沖縄2区で今期限りの引退を表明している照屋寛徳氏(74)=社民=は北中城村長の新垣邦男氏(63)を事実上後継指名しているが、社民県連執行部内で意見はまだまとまっていない。

 さらに、空白となっている4区も、保守票獲得に向け「保守系無所属」候補とすべきとの声がある一方、国政野党第1党の立憲民主が県内初の議席獲得に向け後継候補の擁立を目指している。立憲民主、国民民主、社民は合流に向けた議論を続けており、協議の行方は候補者選考にも影響を与えそうだ。(政経部・大野亨恭)

雇用情勢        

観光けん引し改善続く 多業種で人手不足も深刻化
 

 県内の雇用情勢は好調な観光業にけん引される形で改善傾向を続けた。月別の有効求人倍率では1・2倍前後を維持したほか、特に完全失業率では2018年10月に前年同月と同水準になって以降、14カ月連続で前年同月から改善、または同水準となっている。

 一方で、多くの業種で人手不足が深刻化。バス運転手の人手不足では、路線バスの減便や最終便時刻の繰り上げに伴い、高校の定時制や夜間部の一部生徒が授業を早退せざるを得ない状況に陥った。

 また、人手不足を背景に労働災害が増加した。県内の休業4日以上の労働災害発生件数は1~10月で924件(前年同期比68件増)で、統計のある1972年以降、2番目に多いペースとなった。死亡災害も増加し、前年は1年間で4人だった死亡災害も、10月末までに計9人が亡くなった。

 少子高齢化は沖縄でも深刻化し、今後も人手不足の状況が続くと予測される。

 企業の成長には、こうした中長期的な課題を見据え、安定的な雇用で人を育てる取り組みが必要だ。多様な働き方を認め、女性や障がい者、高齢者など就業意欲はあるものの、従来の働き方では雇用が難しかった人材の活用が求められている。(政経部・仲村時宇ラ)

沖縄予算

一括交付金 79億円減
        
 

 2020年度の沖縄関係予算案は3年連続の3010億円に決定した。総額は維持されたが、使途の自由度が高く、県や市町村が増額を要望する一括交付金は前年比79億円減の1014億円で、6年連続の減額となった。

 一方、国直轄の予算は拡大。19年度に新設され、国が市町村等へ直接交付できる「沖縄振興特定事業推進費」は25億円増の55億円と、存在感を増した。

 19年度に200億円が計上された那覇空港第2滑走路事業の完了後も、1420億円の公共事業関係費は同額で維持された。

 県は沖縄振興計画が残り2年を迎える20年度を「現振計の総仕上げに向けた重要な時期」と位置付け、市町村長らとの意見交換会を19年も5月に実施。一括交付金の減額による事業への影響をまとめ、予算要請の際に渡すなど増額に取り組んだが、実らなかった。

 また、首里城再建費を含む都市公園事業費は、19年度から10億円増の38億円が計上された。県は沖縄関係予算には含めない「別枠」とすることを求めていたが、かなわなかった。(政経部・仲村時宇ラ)

振興計画

21世紀ビジョン審議会 経済成長を評価 貧困解消へ課題も指摘
        

 2021年度末に10年間の期限を迎える沖縄21世紀ビジョン基本計画(第5次沖縄振興計画)。玉城デニー知事から諮問を受けた県振興審議会(会長・西田睦琉球大学学長)は、県が現計画の評価と課題をまとめた総点検報告書(素案)に対し、これまでの沖縄振興施策の成果を認める一方、沖縄が抱える課題の多さも指摘した。1809件に上る修正意見を加えた。

 審議した九つの部会は現計画の社会資本整備や観光産業の拡大による経済成長などを評価する一方、子どもの貧困や待機児童、公共投資事業の地元利益向上など課題を列挙。「次の10、20年先を見据えた計画改善を」と注文を付けた。

 一括交付金には、離島圏域としての人口減少や地理的、社会的な特殊性による全国格差の未解消、各産業で新たに生じた課題克服などを挙げ、「沖縄を成長させる土台」として重要視する。

 答申を受けて県は20年度から新たな振興計画の策定に着手し、21年度中に計画を決定する。最重要課題の「県民所得の向上」と「自立型経済の構築」に向け、時代を切り開く振興計画を打ち出せるか手腕が問われる。(政経部・砂川孫優)

前の記事へ 次の記事へ
連載・コラム
きょうのお天気
沖縄タイムスのイチオシ