社説

社説[2020 新年に]私たちは絶対諦めない

2020年1月1日 08:00

 モノレール駅では大きなスーツケースを引いたり、買い物袋を両手に抱えたりした外国人観光客の家族連れが目立つ。国際通りでは、クルーズ船から下りた多くの外国人観光客の姿が見られる。

 平和であればこその光景である。

 沖縄のことわざ「イチャリバチョーデー(一度会ったら皆兄弟)」は、世界で吹き荒れる排外主義や不寛容とは対極に位置する「共生の思想」である。沖縄滞在を存分に楽しんでほしいと願わずにはいられない。

 2020年の新しい年が明けた。

 沖縄は観光客1千万人時代の新しいステージに入った。沖縄を訪れる観光客の3人に1人は外国人ということにあらためて驚かされる。

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 明があれば暗もある。

 辺野古新基地建設問題である。長年、多くの県民の心に重苦しくのしかかっている。

 米軍キャンプ・シュワブゲート前での座り込みは2千日を超えた。機動隊に何度排除されても非暴力の抵抗を続けている。

 今年は沖縄戦から75年でもある。民意無視の政府への怒り、沖縄のことは沖縄が決めるというウチナーンチュとしての誇り、クヮンマガ(子や孫)のために再び戦場にしてはならない−抵抗運動を持続させているのはそんな強い決意からである。決して諦めることはない。

 私たちの先人は苦難の中にあっても寛容とユーモアを忘れず、豊かな芸能・文化を育んできた。

 「沖縄のチャップリン」と呼ばれた芸人、小那覇舞天さん(1897〜1969年)は沖縄戦が終わった後「命(ぬち)ぬ御(ぐ)祝事(すーじ)さびら(命のお祝いをしましょう)」と家族を失い沈みきった人びとの家に押しかけ、生き残った人たちに漫談や歌、踊りを披露した。笑いで傷付いた心を癒やしたのである。

 そんな有名、無名の先人に思いをはせることは私たちを励まし、勇気づける。抵抗する現場で代わる代わる歌や踊りで鼓舞するのはその精神を受け継いだものといえよう。

 米軍普天間飛行場の一日も早い危険性除去のために新基地建設という政府の考えは破綻しているというほかない。

 防衛省は工期を当初の8年から約12年に大幅に見直す案を公表した。総工費も当初の2・7倍の約9300億円。大浦湾側に広がる軟弱地盤の改良工事のためである。水面下90メートルでの改良工事は例がない。工期と総工費はこれにとどまらない可能性が高い。

 普天間返還は「22年度またはその後」から30年代半ば以降にずれ込む。普天間の危険性の固定化である。責任は、既成事実をつくるため、なりふり構わず工事を強行している政府にある。

 公共工事としても問題だ。公共工事はいったん始めるとやめることが難しい。経済学でサンクコスト(埋没費用)との考えがある。投入した予算は回収することができない。これがサンクコストである。増大するばかりの膨大な事業費と完成時の効果を比較衡量すれば、着手したとしても傷口を広げる前に取りやめるのが得策なのである。

 民意は圧倒的だ。翁長雄志前知事が当選した14年以来、知事選と国政選挙はオール沖縄が12勝1敗。県民投票では反対が投票総数の7割を超えた。安倍晋三首相が「沖縄に寄り添う」なら新基地を断念し、普天間の閉鎖・返還の道こそを探るべきだ。

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 今年最大の政治決戦は、6月の県議選だ。現有勢力は定数48(欠員2人)に対し与党26議席、野党20議席。玉城デニー知事を支持する与党が安定多数を維持することができるかどうかが最大の焦点だ。

 政府も県議選を重要視している。昨年12月末、企業経営者らが菅義偉官房長官の来県に合わせて那覇市内で会合を開き、引き締めを図った。

 首里城が昨年10月末焼失し、県民に大きなショックを与えた。今年は「再建元年」に位置付けられる。

 再建までは長い道のりをたどるはずである。県民主体の再建にするには県民の思いをすくい上げ、再建の過程そのものを公開して観光客を呼び込むような仕掛けが必要だ。

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