社説

社説[ゴーン被告逃亡]保釈条件破りは許せぬ

2020年1月5日 09:14

 大みそかに発覚し、年末年始にかけて、世界中に衝撃を与えた前代未聞の逃亡劇だ。

 会社法違反(特別背任)罪などで起訴され、保釈中の日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告(65)が国籍のある中東レバノンに逃亡した。

 保釈の条件として海外渡航を禁止されていた。東京地裁はゴーン被告の保釈を取り消す決定をし、保釈金計15億円は没収される。

 日本とレバノンには犯罪人引渡条約がない。レバノン側は「主権国家として行動する」と明言し引き渡しに否定的な考えを強調した。4月に始まる予定だった公判は開廷が事実上不可能になった。

 それでも日本政府は外交ルートを通じて身柄の引き渡しを求めるべきだ。

 ゴーン被告はどのように日本を脱出したのか。さまざまな情報が飛び交っている。

 共同通信が友人の話として伝えたところによると、昨年12月29日ごろ、住宅にバンドを呼びクリスマスのホームパーティーを開催した。住宅周辺の監視カメラをかいくぐるため、楽器の箱に潜んで協力者に運び出させ、トラックで移動した。逃亡計画を知っていたのは米警備会社の元米海兵隊員とレバノンの警備会社員の2人だけという。

 関西空港からプライベートジェット機で離陸したとの情報もある。出国審査や荷物検査が行われたが、どう切り抜けたのだろうか。

 出入国在留管理庁のデータベースにも出国記録はなく出入国管理の根幹を揺るがす事態である。法務当局は徹底検証とともに対策が急務だ。

■    ■

 ゴーン被告はレバノンで発表した声明で「有罪が前提で、差別がはびこり、基本的人権が否定されている不正な日本の司法制度の人質ではなくなる」「私は裁きから逃れたのではなく、不正と政治的迫害から逃れた」と日本の司法制度を批判した。

 2018年11月、有価証券報告書に役員報酬を少なく記載した金融商品取引法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。私的な投資の損失を日産に付け替えたとする特別背任容疑で2度逮捕。19年3月の保釈直後に別の特別背任容疑で4度目の逮捕。その後再び保釈されていた。

 弁護士によるパスポート管理、携帯電話やパソコンの使用制限、訪問者の記録などの条件を付け、再保釈では妻との接触制限も追加された。

 逃亡は、厳しい条件ながら裁判官に保釈を認めさせた弁護団をも裏切る行為である。

■    ■

 罪を認めなければできるだけ長く拘束して自白を引き出そうとする日本の「人質司法」は、国内外から強い批判を浴びている。

 近年は被告が弁護人と十分に準備ができるよう改善の兆しがみられ、保釈が認められる傾向が強まっている。

 今回のゴーン被告の逃亡と保釈制度を安易に絡め、保釈を後退させるようなことがあってはならない。

 潔白を主張しているゴーン被告が日本の司法制度を批判するのであれば、逃亡するのではなく、法廷で真実を語ることこそが自身の目的にかなうことではなかったか。

 
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