買い物に行く手間が省けるため、家族でネット通販を利用する。在宅時間がまちまちでポストの不在通知を見ると、再配達の負担を掛ける心苦しさが募る

▼公開中の映画「家族を想うとき」は、過酷な労働環境で懸命に働いても報われない英国の家族の物語だ。主人公はフランチャイズの宅配運転手。独立した個人事業主の名の下、厳しいノルマや罰金制度にがんじがらめになっていく

▼パートタイムの介護福祉士として働く妻も、過密なシフトで2人の子どもとゆっくり話をする時間もない。家族のために働いているのに心身の余裕がなくなり、家族の絆がほころんでいく葛藤を描く

▼長年一貫して労働者や移民に焦点を当て、不公平な社会を問うてきたケン・ローチ監督(83)の怒りが、そこかしこにあふれる。矛先は、グローバル社会を生きる一人一人にも向けられていると感じた

▼ネットで物が買える時代、消費する側の意識も問う。フランチャイズ契約を巡っては日本でも昨年、コンビニの加盟店主から「名ばかりオーナーで営業時間も自由に選べない」などと不満が噴出。24時間365日営業の原則見直しにもつながった

▼利便性を求めるあまり、主人公のような労働者にしわ寄せがいく搾取の構図。「人の人生を狭まるような世界を望んでいるのか」。巨匠の言葉が重く響く。(大門雅子)